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第3話

合理的な生き方
そう言えばオーガニックの話でしたね。彼女、1度重い病気で入院したらしく、それからは健康に気を使うようになったそうです。

だから食べ物はオーガニックにこだわっていて、食卓に並ぶのはいつもヘルシーな料理ばかりでした。美味しかったですよ。とても。

ああ、もう。やっぱりダメだ。ちょっとすいません。目から汗が止まらなくて。ティッシュって貰えたりします?

× × ×

「彼女が亡くなったことを忘れることが出来たら楽なのになぁ。」

いっそのこと他に好きな人が出来たと出て行ってくれたら。あなたのことが嫌いになったと別れを告げられていたら。そしたらきっと、今よりずっと楽になれたはずだ。

「忘れたいんですか?」

「忘れたいです。でもなかったことに出来ない。あまりにも彼女の存在が大きすぎて、新しい恋人を見つけようとさえ思えません。」

「忘れさせてあげましょうか。」

「今はそんな気分じゃないです。あなたとそういう関係は·····」

「違いますよ。あなたに聞いているのは彼女さんとの過去を消したいかどうかです。私はあくまで第三者。あなたが望むのであれば、悲しみを残りの人生のために飽和してあげましょうというだけです。」

「どういうことですか?」

「そのまんまです。」

僕はしばらく黙り込んだ。忘れさせてあげるなんて嘘くさい言葉をすぐ呑み込めるほど、単純な人間ではない。金を貢がせるために占い師の真似でもしているのだろうか。

「代金は一切いただきません。」

「え、タダですか?」

「人助けの一環です。いわば、ボランティアですかね。」

これ以上足踏みをしている訳にはいかなかった。会社を首にならないのは環境に恵まれているから。だからといっていつまでもそれに甘えていられない。
そろそろ涙を拭わなくては。

「·····お願いします。忘れさせてください。」

「わかりました。ただし、1度忘れると元に戻すことは出来ません。そのことだけは頭に入れておいてください。」

「はい。」

「じゃあ残さずハーブティーを飲んでください。」

ごくんと喉を鳴らし、流し込む。これに魔法か何か非科学的なものが溶け込んでいたりして·····。と、期待しながら待ったが、変化がない。

「あの、全部飲んだのに何も変わらないんですけど。」

「何言ってるんですか。」

「へ?」

「だって全部飲まなきゃそのお茶、捨てることになってしまうでしょう?
それはあまりに勿体ないじゃないですか。お湯を沸かして、葉を入れた行動が無駄になってしまうなんて嫌です。もっと合理的にしたいと思いませんか?ただそれだけの理由です。

記憶はそうですね·····明日の朝には消えていると思いますよ。それは私の腕次第ですが。」

なんて真面目な顔をして言うから、反応に困った。本当に嘘くさいのに、今はこの人に頼るしかない現実。ため息を飲み込んで外に出た。

見上げればすっかり夜とのグラデーションが始まっていて、空が綺麗だった。雲はすぐに流されたけれど、確かに雲は存在した。