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第10話

追い出された客
どのくらいたっただろう。相変わらず薄暗い場所なので、空からじゃ時間が読み取れない。

「あの·····っ、大丈夫ですか?」

気がつくとランドセルを背負った女の子が目の前に立っていた。

「あ、ああ、大丈夫。ごめんね、驚かせちゃって。」

黄色い登校帽子を目深にかぶっていて顔はわからないが、「そうですか、良かったです。」という声は身長の割に落ち着きがあって、大人びていた。

「·····君、何か忘れたいことがあるの?」

不意に思ったことを口に出す。女の子ははっとして口をぎゅっと噛み締めた。

「あ、いやっごめんね。変な意味じゃなくて。僕もこの店で記憶を消してもらったことがある。」

「そうなんですか?」

「うん。でも、大切なことを消してしまったみたいで·····でも、もう手遅れなんだ。いちど忘れたら、取り戻せないらしい。」

「私は、思い出せなくなってもいいです。むしろ、そうであって欲しい。」

こんなに幼い女の子がいったい何を忘れるっていうんだ。

「じゃあそんな君にあえて言うんだけど、このお店は良くないよ。」

「えっ?」

「店主が冷たいんだ。記憶を消せますと自分から持ちかけてくるくせに、消したあとはどんな結果になっても責任どころか、話すらまともに聞いてもらえない。僕はさっき店から追い出された。」

「そんなぁ·····」

女の子は悲しそうに顔を歪める。