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第6話

いない、ない
 目を覚ますと、彼女がいなかった。

お揃いのマグカップ、ふたつ並んだ歯ブラシ、財布、スマホ·····。

彼女の私物は綺麗に揃っているのに、如何せん彼女がいない。最初はコンビニにでも買い物に行ったのかと思ったが、何も言わないで出かけるような人ではない。

僕は訝しげに首を捻ると、コーヒーを飲み、トーストをかじる。

連絡をしようにも、スマホがここに置いてあるから出来ないのだ。でも、今日は平日だから仕事があるはず。きっとすぐに戻ってくるだろう。

そう安易にたかを括っていた。

1時間ほど残業をしてから家路につく。彼女の方がいつも早く帰ってきて、夕飯を作りながら待ってくれている、はずなのに·····。遠目からアパートの角部屋に目をこらすと、明かりがついていなかった。

「·····なんでだ?」

遅くなるなんて言っていたっけ。

足早に路地を進む。

無意識のうちに走っていたらしい。玄関のノブに手をかけた時は、額に汗が滲み、酸素を取り込むのでさえ苦しく感じた。

朝、家を出た時と同じように家具や小物は1ミリも動いていない。不気味なくらいしんと静まり返る部屋に胸騒ぎがした。

呼吸は整ったはずなのに、ハッハッと浅い呼吸が口から溢れて止まらないのだ。昨日、彼女は僕に何か特別な予定があると言っていただろうか。

そうでもない限り、朝から今まで家にいないなんて考えにくい。

「·····待てよ。」

彼女は昨日何を言った?何を話した?

昨日彼女と会った記憶がなかった。カフェから帰ってきて、部屋でひとり、テレビを見ていた。

·····いつから彼女を見失ったんだ?

当たり前に隣にいた存在なのに、身近に温もりを感じられない。遠い日の事のように思えてしまうのだ。一緒に暮らしているのに?どうして?

目を閉じてゆっくりと振り返るが、虚無感ばかりがあとをついてまわり、どのページにも空白ばかり。

彼女だけが、いない。