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第2話

懐かしい
ハーブティーというと爽やかな色合いをイメージしていた。しかし、出されたのはダージリンの紅茶と同じ色。

「あ、美味しい。」

口から鼻へすーっと抜けていく軽さ。後味はスッキリしていて、頭がさえそうだ。

「イギリス産のオーガニックのハーブを使ってます。」

「オーガニック·····」

「何か問題でも?」

「いや、なんか随分懐かしい響きだなって。昔は·····って言っても1年前なんですけど、よく聞く言葉だったんです。今は疎遠になっちゃったんですけどね。」

「どうしてです?」

「長く·····なっちゃいますけど。それに、事情が明るいものじゃないんですよ。」

「強要は致しませんし、あなたのタイミングでお話してくださればいいです。

ただ、この店の目的の大方は、あなたの話を聞くことです。

全部話すのが面倒なのであれば、部分的にでも構いません。」



× × ×
彼女を失いました。

婚約もしていました。子供は2人欲しいね、なんて言う会話もよくしたんですよ。

穏やかで、大声で笑ったりとかはしないんです。学生時代のあだ名は委員長。彼女、ごく普通の図書委員なのにそう呼ばれていました。長女なので面倒みがよくて、本当にしっかりしていた。

あ、すいません。これはただの惚気話ですね。

最愛の彼女が交通事故で、亡くなったんです。まだ、夢もすべて叶っていないはずなのに。やり残したことがあるはずなのに。それを無残にも金属の塊は止まることなく奪っていきました。

悔しいです。

許せるわけ、ないじゃないですか。

それはもう1年前の話なんですけどね、11月14日の雨が降っていた夜でした。未だに仕事が手につかないんです。ミスばっかりで、この前も上司に怒られました。

「そんなに辛いなら有給でもとったらどうだ。」
って。

でも無理です。

部屋にはいくつも思い出が散らばっていて、悲しくなるんです。

もう必要ないから捨てればいいい。それはわかっている。でも捨ててしまったら彼女との思い出も消えてしまいそうで怖い。彼女の生きた証を自分の手で失くすなんて出来ない。

苦しいです。ずっと前を向けないから。過去に縋りついて、思い出に浸って、涙を流すことしか僕には方法がない。

それならいっそ彼女と出会わなければ良かったなんて、思ったりします。

最低ですよね。日常の輝きを知った後に、そんなことを言うなんて。

事故の直後彼女の亡骸を見て、5日後に葬式に参列して、それでもなお死を受け入れきれない僕は、どうしようもなくダメなやつなんです。