αはM-712-JPNの攻撃を止まることなく動き続け、狙われないように回避を続ける。
「おいα、避けてて大丈夫なのか?まあ、ユウジよりは長いこと持ってるけどよ」
トウヤが心配そうにαへ話しかける。
見た目はユウジと同じだが、それでもユウジの中に普段は潜む別人格ということは動きからして分かる。
正直なところ、漫画で見るようなヒーローみたいだ、ともトウヤは感じていた。
「トウヤ慌てすぎ。今はあの人工衛星を落とすタイミングを伺ってる」
αは簡潔な返事だけをして、人工衛星であるマクロブの本体に目を向ける。
αの身体能力なら跳べばあの高度まで到達出来る。
しかし、確実に隕石で阻んでくるだろう。
身を翻したところで回避しきれる保証はない。
空中飛行の能力を欲しい、なんてαは思ったところであった。
同じ頃、司令室ではミサキとトウヤが戦況について頭を抱えていた。
「一度αを撤退させた方がいいと思います、ハセガワ隊長」
ミサキはトウヤにそう提案した。対してトウヤは納得するような返事をせずに
「そうだなー、それが最善策なのは分かってんだけど……αにだって未知の部分が多いし、もうちょいやってみない?」
「あまりあれの動くのは見たくないんですけどね」
ミサキは呆れたように言い放ち、モニターの映像を目に映す。
すると、αは隕石の攻撃を振り切り、M-712-JPNは高く跳び上がる。
もちろんの事、そんなαを包囲するかのように大量の隕石が出現する。
ミサキがそのモニターの中の光景に息を飲み、トウヤが驚きのあまり叫んだその時。
マクロブの入力してくるコードの解析をしていたタクミが
「隊長、司令官、M-712-JPNが突如沈黙。外部から未知のプログラム言語が入力されたようです」
トウヤはマジで!?と言いながら、タクミに駆け寄りモニターを見る。
そこには、トウヤがマクロブ対策機構本部のクラッキングを防いだのと類似したプログラム言語が入力されていた。
αは跳び上がる。なんの策もないが、何となく今なら倒せると思ったのだ。
この身体を損傷させてしまうのは申し訳ないけれど、ユウジよりは早く再生できるはずだ。
頭部と心臓部の強度だけでも強化すれば、死ぬのは免れる。
いざ、隕石がこちらへ向かって落ちてくると思ったら、隕石は全て重力に従い落下するだけであった。
「……?」
αは疑問に思いながらも、足を振り上げM-712-JPNに向かって足を振り落とした。
その頃マクロブ対策機構本部では、一人の青年が電子の世界で演算を行っていた。
「よーし、……こんな事したら消されることになるかもね」
言っていることの割には恐怖心のない様子で、エリック・カーソンはそう言った。
「にしても、これがほんとにアキトが望んだことなのかな」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。