「てなわけで、予想通りまた同時にマクロブがこのニホンに攻めてきたわけだ!」
トウヤが作戦会議室でそう叫ぶと、隣に立っているフランシスカから、何がてなわけでだと野次が飛ぶ。
三ヶ月前までは作戦を聞く隊員の一人だったフランシスカも今は隊長という立場で皆に指示を出している。
トウヤからは辛い中頑張っているように見えるが、本人はそうであると絶対に語らない。
当たり前のことかもしれないが。
「とりあえず、二度目の同時侵攻の餌食に俺らはなるわけだし、今回はセンダイの連中が先にやられている。まあ、あいつらが一体は倒してくれたおかげで、俺らが討伐する対象は二体に減った。それは感謝しないといけない」
フランシスカは黙り込む。
事前に知らされていた報告だと、センダイの討伐部隊がマクロブ三体を相手に戦い、攻撃部隊の隊長を含む二百人以上が死亡した。
「よーし、それじゃあこの俺が今回出現する奴の概要を説明してやる!まずは……」
トウヤが軽快な調子で話す内容を、ユウジも収容室で聞いていた。
事前に聞いていた話だと、強度がより高い方がユウジに討伐対象として回されるという話だ。
前回はサイタマの討伐部隊がマクロブの足止めをしてくれていたが、周辺の県は何らかのマクロブの出現で大量の負傷者を出している。
三ヶ月前の対策なのだろう。
そう考えているうちにも、話は進み、どの部隊がマクロブを討伐するかとなっていた。
「じゃあ、この弓矢みたいなやつ、なんかカッコいい名前でも付けてやりたいけれどM-889-JPNをユウジが、槍みたいな、こいつもカッコいい名前を付けたい、ゾロ目の888-JPNをお前ら討伐部隊が倒してくれ」
一部からえーという声が聞こえてくるが、トウヤが何か言う前にフランシスカが机を思い切り叩いて
「ごちゃごちゃ言うなお前ら!私らはユウジとも協力して絶対マクロブをぶっ殺す。その為にこの頭悪そうなトウヤだって作戦組んでんだよ。偉そうに話してんじゃねーよ」
フランシスカが周囲睨みつける。
その様子は隊長として皆をまとめているようにも、マクロブへの憎しみをぶつけているだけにも見えていた。
「まあ、作戦でどうも上手くいかないって所とか、動きに応じた変更とかは好きなだけやってくれて良いし、俺には実際の戦闘なんか分かんねえから、そこは上手くやってくれ」
フランシスカはトウヤにも同じような視線を向けるが、大きなため息をついて、作戦室の隅に移動する。
トウヤの作戦に対する詳細な説明が終わるまで、フランシスカは金髪をなびかせてどこか遠くを見つめるばかりであった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。