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2021/09/11

第80話

帰還者
「ただいま、取り敢えず帰ってきたともー……」

情報室の中で、トウヤの椅子に座って机にペタンと頬をつけ、ニホン支部の支部長ミズキ・キサラギは疲れた様子でそう言った。

「お疲れ様です、あとそこ俺の席なんで返してくれませーん?」

トウヤがミズキの真後ろに立つと、ミズキは面倒くささを保ったままの声で、

「嫌だとも、もう一日君に支部長の権利をやるから、ここに居させてくれたまえ」

トウヤがそれなら……と検討していると、タクミが支部長ーと声をかけ

「ユウジには話の結果伝えたんすか?俺らは会議どうなったか資料貰ったけど、あいつが一番気になってんじゃないすかね」

タクミのその言葉に、ミズキは

「僕はハセガワ君のように優秀だからね、とっくに話に行ったさ」

M-712-JPをαと共に撃破し、光の射さない収容室で思考にふけるユウジの元に、少年の姿をした支部長がやってきた。

「あ、支部長、会議お疲れ様です」

フラフラとした様子で歩いて来ていた辺り、かなり疲労が溜まっているのだろうと考えたユウジは、ミズキをそう労った。

ミズキはああ……と、ユウジには聞こえない程度の声をこぼし、予め言おうと思っていた内容を話す。

「ともかく、君とα君によるM-712-JPNの撃破は目を見張るものだった。賞賛しよう」

正直なところ、予想以上に被害を出せなかったM-712-JPNに呆れを覚えながらも、ミズキは表向きはユウジを褒め称える。
ユウジこと、HM-001とαが攻撃の回避に務めた事による民間人への被害はなかなかのものであった。
Dr.ソロモンへはその点においてのみは評価してやってもいい。

「ありがとうございます、支部長。お疲れのところ申し訳無いのですが、会議の方は……」

ミズキはユウジを見上げると、話を始め

「会議中に急にリガードという名の人型のマクロブが乱入して来てね。アメリカの一部に大きく被害を出した影響で会議は中止、君の判断についてはひとまず保留となった」

ユウジはうんうんと言った様子で話を聞いていた。ミズキとしては、リガードを派遣したのはこちらに話を優位に進めさせるためだったが、まさかキレてあのような真似をするとは予想外であった。
まだ、Dr.ソロモンのマクロブで出す予定だった被害以上のものは出してくれただけ、大目に見てやれるが。

「保留……か、ありがとうございます。俺なんかの為に」

「自分を卑下することは良くないとも。今の君は討伐部隊の死亡率を下げ、マクロブの迅速な討伐へと貢献してくれている。自信を持ちたまえ」

それでもユウジは納得した様子を見せない。
その理由は何となくわかっているが

「ミサキ君はまだ冷たいままなのかい?」

ユウジは頷く。
前よりかは話してくれるようになったようにも感じていたが、最近また冷たく接されているように感じている。
もしかしたら、人間だった頃から嫌われていたのかもしれない。
両親が死んだばかりの頃も、冷たくされていたような気も今はしている。

「彼女も君に申し訳ないと感じているのかもしれないね、庇ってもらってしまったとか。そういう優しい人じゃないか。きっと君が悲しんでいる事も分かってくれるよ」

「それだけだと良いんですけどね。話し合おうとしても、ミサキはすぐに帰ってしまうので」

「まぁ、彼女にもカウンセリングを初めとして精神的なケアも勧めておこう。それと、今後共君を人間にもどす手段の解明には手を尽くす。どうか君もマクロブの討伐に協力してくれ」



支部長の帰還を聞き、彼を迎える事を終えたミサキは、カーテンを閉ざしきった自身の寮の部屋で俯いていた。

「私は誰を信じたら良いの……?アキト、助けてよ……」

そうつぶやき、ソファーへと身を沈めたミサキは、テレビの少し前に置かれた、死んだ家族と撮った写真へと縋るような視線を向けた。