「今回もお疲れ様、HM-001」
小さい収容室の中で、ユウジはミサキの労う声を聞いていた。
あのギロチンに引き込まれそうになって抵抗していた時に、助けてくれたのは凄く感謝している。
なんて言ってたか覚えてないって話したら、怒ってたけど安心したとも言っていた。
「ところで、ナゴヤ市に出てるM-655-JPNは?」
「それなら重傷者の多いショバタの援護としてカゲトラとジョーウンが討伐に行ってるわ」
ショバタというのはアイチのマクロブ討伐部隊の名前だ。ミサキ曰く、まだ撃破されていないらしい。
「だったらすぐに救援に!」
ユウジはガラス張りの壁に写るミサキにそう叫ぶ。
それを聞いたミサキは呆れたのか深くため息をつき
「救援なら最初から拒否されてるけど?全く……あのジョーウンのアマノ隊長が救援なんて求めると思う?」
「あの人、どうして俺のこと嫌ってくるんだろな」
「さぁ?知らないわ」
ユウジがタジマで兵器開発をしていた時はアマノ隊長に何かと信用してもらっていたが、1か月前、ちょうどユウジがマクロブになった頃からミサキ以上に冷たくされている。
恐らくマクロブを根っから嫌う人なんだろう。
「私はそろそろ仕事だから戻ります」
「え、ああ……うん」
なんか久しぶりに楽しそうに話しているミサキを見た気がする。
「嫌われてるんじゃ……ないのかな」
まぁ、ミサキにも何かあるのだろう。
ユウジはそう考え、疲れをとるために眠りについた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!