第14話

情報調査部隊ナガシノ
67
2020/12/24 10:00
「今回もお疲れ様、HM-001」

小さい収容室の中で、ユウジはミサキの労う声を聞いていた。
あのギロチンに引き込まれそうになって抵抗していた時に、助けてくれたのは凄く感謝している。
なんて言ってたか覚えてないって話したら、怒ってたけど安心したとも言っていた。

「ところで、ナゴヤ市に出てるM-655-JPNは?」

「それなら重傷者の多いショバタの援護としてカゲトラとジョーウンが討伐に行ってるわ」

ショバタというのはアイチのマクロブ討伐部隊の名前だ。ミサキ曰く、まだ撃破されていないらしい。

「だったらすぐに救援に!」

ユウジはガラス張りの壁に写るミサキにそう叫ぶ。
それを聞いたミサキは呆れたのか深くため息をつき

「救援なら最初から拒否されてるけど?全く……あのジョーウンのアマノ隊長が救援なんて求めると思う?」

「あの人、どうして俺のこと嫌ってくるんだろな」

「さぁ?知らないわ」

ユウジがタジマで兵器開発をしていた時はアマノ隊長に何かと信用してもらっていたが、1か月前、ちょうどユウジがマクロブになった頃からミサキ以上に冷たくされている。
恐らくマクロブを根っから嫌う人なんだろう。

「私はそろそろ仕事だから戻ります」

「え、ああ……うん」

なんか久しぶりに楽しそうに話しているミサキを見た気がする。

「嫌われてるんじゃ……ないのかな」

まぁ、ミサキにも何かあるのだろう。
ユウジはそう考え、疲れをとるために眠りについた。
同時刻、マクロブ討伐機構ニホン支部の情報処理室では複数の隊員がコンピュータ上のデータベースを元に戦闘記録を解析していた。

「だりぃー、何でこんな仕事しねーといけないんだよー」

情報処理部隊、ナガシノ隊長のトウヤ・ハセガワは気だるげに吐き出した。
椅子の背もたれに体重をかけ、明るい茶色の髪が揺れる。

「落ち着いてください隊長、こういう作業も楽しいものですよ」

「ミナガワはよくこんなの出来るよなー、カゲトラ入りたいとか思わないわけ?」

「僕は……戦うの怖いからさ。それにまだ死にたくない」

ケイ・ミナガワはトウヤに淡々とした調子で答えながらモニターに必要な情報を打ち込んでいく。
ケイは座っていても普通の成人男性と同じくらいある程に背が高い。
カゲトラやジョーウンで戦う方がずっと向いているとハセガワ隊長を始めとした多くの人に言われてきた。
それでも、

「本当に、まだ死にたくないんだよね」

隣にいるトウヤにも聞こえないほど小さい声で、そう呟いた。

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