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2021/09/26

第81話

胎動する月
「やっほーユウジ君、君に悪いニュースがある!」

収容室前に、タブレット端末を持ってカゲトラ隊員のローゲンハーツがやってきた。

「悪いニュースって……あんまり聞きたくないですね」

ユウジは苦笑しつつもそう答える。
ローゲンハーツは三ヶ月前の戦闘による重傷からやっと復帰したらしい。
回復は一日足らずで終わったのに、リハビリ生活だったとトウヤに愚痴っていたと聞いている。

「まあ、本当は僕も伝えたくはないんだけど、何より君に関する事だし、支部長の命令だから逆らう訳にもいかないんだ」

わざとらしく声を落とすローゲンハーツにユウジは悪いニュースの内容を考えていた。
何となく内容は分かっているが。

「じゃあ発表しまーす。先のM-712-JPN戦において、君のせいで生じた犠牲が多すぎたので、支部長が責任に問われてるー」

ユウジは何も言わずに頷いた。
何となく、即処分の決定か支部長の責任問題であるとは考えていた。
そうなると、そろそろ戦うのもおしまいかもしれない。
ならばせめて、ミサキと何か話したい、そんな風に考えてしまう。

「ねー、もうちょっと驚いてよー、君の命かかってるんだよ?分かる?」

「分かりますよ、でも用済みで殺される可能性は常に考慮してきた。別に今更驚くことでもありませんよ」

表情ひとつ変えることなくそう言ってのけるユウジに対して、ローゲンハーツはアキトの面影を見出していた。
平然とした態度で残酷なことを言ってのけるあの姿は、人に恐れを抱かせながらも同時に引き付けて見せた。
あれを行える人間はあまり多くない。
ローゲンハーツはそんなことを考えながらも、ユウジに話を続けて

「まあ、下手に混乱されるよりはマシだけれどさ、支部長も君が生きられるように尽力しているみたいだから、ユウジ君も頑張ってアマノ隊長のお父さんを説得できるといいね」

「俺には発言権なんて無いと思いますよ」

ユウジがそう言う頃には、ローゲンハーツはひらひらと手を振って、収容室のある地下から去っていく所であった。




「それは話が違うと申しております。アマノ幕僚長」

会議室にて、ミズキ・キサラギはカゲツ・アマノ幕僚長と呼ばれる人物と話していた。
ジョーウンのアマノ隊長の父にあたり、癖のある髪を綺麗に整えた人物であった。

「当初は特殊部隊の無い我が国において、他国との交渉にも使えるものであると判断しました。しかし今回の犠牲者の数と本部に弱味として突かれてしまった以上、あれを生かしておくのはすでに意味を失った」

「しかし、イサ防衛大臣はこれからも兵器利用を承認すると仰りました。その大臣の考えとあなたの考えが一致していないのはどういうことでしょう?」

ミズキの問いに答える前にアマノ幕僚長はため息をついてお茶を一口飲むと、

「あの方はお優しいですから、元人間だったものを殺すなんてこと考えたりしません。しかし私は違う。既にあれは不必要だ」

「であれば直接大臣に進言されたらどうでしょう?その命令にはさすがに逆らえません」

「出来るのならそうしたい、しかし私が言ったところであの人は認めないのですよ」

「そこで私にシノノメ氏の処分に賛成させ、大臣に逆らえなくすると、なかなかに非道なやり方ですねー、これが表沙汰になったら私もあなたもイサ防衛大臣も総倒れですよ、僕は困りませんが」

「納得いただけないようですね、では日を改めて」

ミズキはアマノ幕僚長の去った会議室でにこにこと微笑んでいた。