と声をかける
しかし返ってきたのは
『…はよ』
という小さな声
やる気を全て失ったかのような声
そこからは地獄のような時間だった
会話は必要程度
誰ひとり目すら合そうとしない
1日が1年くらい長く感じた
だから宿泊するホテルに着く頃にはヘトヘトだった
…これで休憩できる…
と思っていると
『なんなんだよ…』
と言った
私ではない。
宇佐美くんが。
怒っているように聞こえた
でも彼は泣いていた
…また傷つけてしまった
今度は何にも関係のなかった人まで
私のついた嘘で
何人も傷ついている
と言いながら2人は私たちの元を去っていった
沙羅が私の名前を呼ぶ
明るく優しい前みたいな声…ではない
絶望、怒り、苦しみ負の感情が全て混ざったような声
これから私たちの運命が決まる。
そんな気がした
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!