前の話
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「拝啓、親愛なる貴方様______」
久々に見た君の丸みを帯びた癖字
最後に君を見たのは3ヶ月ほど前の学校で、
少し暑くなってきたからか校舎裏の木の陰
付き合っていたのにわざわざこんな所に
君は僕を呼び出して
笑って僕に告げた言葉
__それが最後の言葉、
「ごめん、貴方ともう付き合えないの」
え…?
「なんていうのかな、貴方は優しすぎるの」
「私と合わなかったのよ、別れよ」
優しいと、好きだと、僕のことを、
もうすぐ付き合って1年になるのに
今、までのは………全部、
「全部嘘よ」
笑わないで、大好きなその笑顔で、
それから彼女は学校に姿を現さなくなって
8月の病室で君と再会した
冷たくなった君は、
最後に何を思っていたのだろう
訳が分からない僕に渡された手紙を読んで、彼女に泣きついた
「__病気のことも別れたくないことも、どうしても言えなかった
優しすぎる君が大好きだったの
悲しむ所なんて見たくなかった
嘘ついて、ごめんね________」
馬鹿だなぁ、
優しすぎるのは君だよ
そっと呟いて
ぴくりとも動かない君の手に、口づけをした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。