今授業中で問題を解いてもらっている。
私は数学を教えている。
昔から数式を解くのが得意で
何より自分で答えを見つけることが
とても大好きだった。
嫌なことも忘れたいことも
全て数学にぶつけていた。
数学は答えの糸口でもあり
逃げ道でもあった。
ぼーーーーっと
窓の外にある海の水平線を眺めていた。
すると
恥ずかしそうに耳まで真っ赤にして
聞いてきたこの子は…
できるだけ寄り添って見てあげる。
できるだけわかりやすく丁寧に教えてあげた。
マークくんは目を輝かせ
「やってみる!!!!」と意気込んで取り組んだ。
教室を2周ほど回っていた時に再び声をかけられた。
自信なさげに回答を見せてきた。
教えた通りちゃんとできていた。
私は無意識にマークくんの
頭を撫ぜていた。
呼ばれたので「ん?」と思い
マークくんを見ると
ゆでダコのように顔が真っ赤になっていた。
…?なんか言ったかな
そう言ってマークくんは再び問題に取り組んだ。
マークくんが分かりやすい説明だったって言ってくれて
とても嬉しかった。
達成感が目に見えてわかるこの職業に
就いて良かったと心から思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。