ーアレティを待たせちゃ怒られるー
レンは世界について色々考えたかったが約束を破るわけにはいかず、考えるのは明日に先延ばしにした。
まずはアレティの遊び相手だ。
剣を交える音が響き渡る。アレティは相変わらず負けている。
ーこうしてみると凄まじく弱いな、子供だからいいが昔の方が強ぇガキいっぱいいたぞー
平和になったため魔力を使うことが無くなり、全体的に人々の力が弱くなったのだ。
「あー、やっぱ強い。なんでだよ」
ーまあ、力の使い方わかってるからなー
「皇族なのに貴族に負けるなんて...」
確かにそんなんじゃ皇族として示しがつかないよな。
そうレンは考え、ある提案をした。
「じゃあ、俺が教えようか? どうすれば強くなるか。」
「え、良いの!? よ、よろしくお願いします。」
ー俺的にも弟子を育てたい願望あったしなー
こうしてレンとアレティの特訓が始まった。
2年後、レン達は12歳になった。
「レン! 今日はアリスお姉様が帰ってくるって!」
ドタドタと奥から嬉しそうに走って来たのはカレンだった。
レンはいつも通りアレティの特訓に行くところだった。
「えっ?! アリス姉さん帰ってくるの!!」
アリスはエクセレティコ家の長女で今は数々の国へ旅に出ている。
「だから今日も早く帰って来てね!」
「【炎属性強化魔法】うぉりゃゃっ!!」
前に手を出し、炎の球体を出す。その球体から小さな無数の火球が飛び出す。
「まだまだだなぁ、アレティ。」
レンは同じ魔法で対抗する。実力差がありすぎてレンの魔法がアレティの魔法の数倍の大きさになった。
そしてアレティの魔法を消し飛ばす。
「クッソぉ、なんなんだよバケモンが!」
そう言いながらもお互い楽しそうに笑っている。
それを陰から見ている人がいた。
「2人とも大きくなったんだね、それに強くなった。」
「アリス姉さん!」
笑顔で2人を見るこの女性は紛れもなくアリスだった。
「国王に挨拶しに行って帰ろうと思ったら魔力を感じてね、それで見にきたら君たちだったんだよ。」
「どうぞ続けて」と言われ、レン達は姉に成果を見せるように特訓をした。
少し様子を見てアリスは言った。
「ねぇ、2人とも。ここに行ってみない?」
そう言って見せたのは〈アプレンデール勇者育成学園〉のパンフレットだった。
アリスは数々の国を旅して回っている。そこで出会った人がアプレンデールの卒業生で、丁度学園に入学できる年齢の弟がいると言ったらこれをくれたそうだ。
「良いんじゃない? 私が見たところ入学なんて余裕よ!」
「そうね、いずれ学校に行かなければならなかったんだから丁度いいわ。」
母も姉も乗り気だ。
ー学校か、確かに気になるな。そこでならアレティ以外の人とも出会えるー
「お前も言われた? 行くかどうか」
「行かせる気らしいよ、ちょっと楽しみかも。」
次の日、レンとアレティは2人でそのあとのことを話した。
アレティは皇族だが、アプレンデール学園では全国家が認める優秀な学園である為、安心できるという。
「どうせ俺は次男だからな、ここ(王都)に留まる理由も無いしやっぱ楽しそうだから。」
そう2人で笑い合って新たな街へ心躍らせていた。
準備を整えた2週間後、2人は入学試験を受けるべくアプレンデール学園に旅立つことになった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!