俺はコンビニを出てメンバーのいる場所へ向かう。
デビュー前だし、日本だし、ペンに囲まれて進めないみたいなことはない。でも少なからず俺たちのことを知っている人はいる。
少し歩いて気づいた。
……商品忘れた。
やらかしたな。取りに戻るか?
でもレシート捨ててしまったし……。
もういいや。また買おう。
さすがにまたあの店に行くのは勇気がいった。お金を払うのを手伝ってもらい、その上商品忘れたのだ。あの子には会いたいけれど、申し訳ない。
近くにコンビニがないか探す。
その時だった。
また
あの子の声。
その子は走ってきた。息を切らして汗もすごい。
俺が買った商品だ!
もしかして…、いや、もしかしなくても届けに来てくれたんだ。
(ありがとうございます)
俺は頭を下げた。
商品を届けてくれたこと、そして、またこの子に会えたことに。
拳をつくり、ジェスチャーで何かを伝えてくる。
なんだろう。
可愛いな、この子。
とっても愛しい。
二度目のお辞儀をして今度こそ俺はメンバーたちの元へ戻る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。