私の名前を呼ぶ声が聞こえると同時に、頭に軽い衝撃が走った。
眉をつり上げて怒っているのは、私のお姉ちゃん。
どうやらチョップをくらったようだ。
誤魔化すように笑ったけど、お姉ちゃんは険しい表情のままだ。
その言葉を理解するのに、数秒時間を要した。
理解した途端、私は素っ頓狂な声を上げた。
姉のその「恋」という単語が、頭の中でぐるぐるする。
頭に浮かんだ疑問をそのまま口にすると、姉が悪戯っぽく口角を上げて私を見つめた。
私は反射的に、隠すように手で顔を覆った。
その言葉を聞いた途端、脳裏に優里の姿が浮かんだ。
見えては、隠れ。見えては、隠れ。
ゆらゆら、ゆらゆら。
姉は私の反応を面白がるように、身を乗り出して続けた。
その目から、好奇心の色が見て取れる。
私は、言葉に詰まった。
ゆらゆら、ゆらゆら。
よくわからず、姉の言葉をそのまま復唱する。
やっぱり、また、ゆらゆら、ゆらゆら。
姉の声を無視して、私は部屋に逃げ込んだ。
私は、優里が、好き。
わかってる。
でも、これが、恋…?
そう思った途端、頬がみるみる熱くなった。
頭に浮かぶ優里が微笑む度、鼓動が高鳴る。
あぁ、これは。そうか、そうだったんだ。
私は―優里に、恋をした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。