第8話

優里
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2018/10/23 09:32
終業のチャイム。
周りの人がまばらに席を移動し始め、徐々に教室が騒がしくなる。
私はすぐにでも朱里と話したくて、彼女の姿を探しながら立ち上がった。
ドア口に、朱里は立っていた。
誰かと、話している。
朱色のネクタイだから、きっと3年の先輩だ。
男の、先輩。
胸がチクリと痛んだ。
胸の奥が、モヤモヤする。
ざわざわ、ざわざわ。
気付いたら、男はどこかへ行ってしまっていた。
朱里がこちらに気付き、楽しそうな顔で近付いてくる。
アカリ
アカリ
優里!小テストどうだった?私古文が全然わかんなくって…
朱里の話が、右耳から入って、左耳へ抜けていく。
ユリ
ユリ
…朱里、今話してた人、誰?
私は、聞いた。聞いてしまった。
アカリ
アカリ
え?あぁ、部活の先輩。今日のアップどうするかって話してた
それを聞くと、みるみる心の霧が晴れる心地がした。
ユリ
ユリ
なんだ、そっかぁ
思わず、笑みがこぼれた。
すると、朱里が私の顔を覗き込んで、悪戯っぽく笑って言った。
アカリ
アカリ
優里…もしかして、嫉妬?
嫉妬?…私が??
ユリ
ユリ
え!?
そう思ったら、頬が火照るのを感じた。
朱里はにやにやしながら私の顔に手を伸ばす。
私の頬に触れながら、朱里は呟いた。
アカリ
アカリ
かぁわいい♡
恥ずかしくて、もうどうしようもなくて、私は俯いた。
私は、私の心は、とてつもない高揚感で溢れていた。
彼女には、私だけを見てほしい。
他の人と話しているなんて、絶対嫌。
他の人と一緒にいるなんて、絶対嫌。
奪われたくない。
他の人になんて、渡したくない。
朱里は、私のもの。
朱里の全てが、私のもの。
朱里。朱里朱里朱里朱里。
朱里。
私の、朱里。

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