彼女の凛とした声が、私のぼうっとする意識を呼び戻した。
1番の友達。大好きな友達。私にとって、欠かせない存在の朱里。
朱里の笑顔を見るだけで、疲れなんて何処かへ行ってしまう。
その眩しすぎる笑顔に、思わず頬が緩んだ。
学校に着くまでの道のり、テストがヤバイとか、面白い漫画の話とか、そんな他愛もない話をしながら、のんびり歩く。
私は、この時間が好きだ。
もっと言えば、彼女といる時間、一分一秒、ほんの一瞬、その全てが、たまらなく好き。
ふと、朱里が小さく声をあげた。
朱里の視線の先を追うと、私達の前を、男子、というのか、男性、というのか。
高校生くらいの二人組が歩いていた。
手を、繋いで。
ただの友人とは思えないその距離に、私達は暫くの間、言葉を失った。
私は声を潜めて、そう彼女に問いかけていた。
私は、何を言っている…?
朱里は、怪訝そうな顔で私を見たあと、少し考え、言葉を選びながら言った。
曖昧な顔で、彼女は微笑んだ。
そうか。やはり、そうだよね。普通、そうよね。わかってた。
わかっていたけど。ほんの少し、期待していた。
いや、期待したって、どうなるわけでもなかったけど。
徐々に、動悸が速くなる。
私の異変に気付いた朱里が、私の顔を覗き込む。
朱里の返事を聞かないまま、私は走り出した。
目頭が熱くなる。
熱いものが目から溢れ、私の頬に筋をつくる。
さて、どうしよう。
これから朱里の顔を、まともに見られないかもしれない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。