またこいつだ。何回嫌味を言っても絡んでくる。寧ろその根気は尊敬する。
長山のポケットからキラリと光るものが見えた。
ナイフだった。料理部である長山がいつも使っている水色の果物ナイフ。この大きさのナイフで心臓を刺されたらきっと一撃で死んでしまう。死ななくても、修学旅行までに治すことは難しいだろう。
考えてる暇もなく、ナイフを持った橘が私めがけて歩いてきた。
兄の蓮の声で目が覚めた。どうやら、悪い夢でも見ていたようだ。肝心の内容は覚えていない。だが、酷く汗をかいていて、呼吸も荒かった。
そうだ。今日だ。遂にみんなに漫才を披露する。
誰にも見せていない私と松永の漫才。クラスの人にも、先生にも。2人しか知らない。
何故か分からないが、人恋しかった。
お兄ちゃんと、ひたすら話していた。漫才を書いている松永の真剣な表情がやけに笑けてくること。橘に何度も嫌味を言われて松永が初めて反発した時のこと。朝になるまで。
もうこれで、学年全員の前で漫才をする覚悟が本当にできた気がした。
こんなに面白くて最高の相方がいるって実感できたから。
𓈒𓂃🌷𓂃𓈒
面白いことを思い出した時の松永の表情は、いつもきらきらしている
今夜。私たちの最高の漫才で体育館に爆笑が巻き起こる。
*前投稿した時橘と喧嘩してたけど長山ですごめんなさい橘はいい子だから!間違えました!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。