第27話

無神経
8,197
2018/06/02 11:15
 果たして私は、計で何回イッたのだろうか?
 気づけばシーツは私の淫らな液でびしょ濡れになっていた。

 その存在を忘れ足を置こうと降ろす度に、ひんやりとした冷たさに「ひっ」と声を上げ驚く。そんな私を遠くで眺めながら慧さんがクスクスと馬鹿にしては笑うのだ。
「ちょっと、笑わないでよ」
 恥ずかしいじゃん。と、彼の頬をつねながら口を尖らせた。窓から差す街頭の光により青白く映される彼は、何とも神秘的で色っぽかった。

 露になっている彼の胸板を指でなぞる。顔つきの割りには案外しっかりした身体付きをしており、思わず意外なギャップを感じさせられた。
 どうして事後の男性ってこんなにも男らしく見えてしまうのだろう。腹いせに今度は彼の脇腹に若干付いた肉を捻ってやった。
「……さっきからさ、俺に恨みでもあるの?」
 私の悪戯に痺れを切らしたのだろう。

 ムッと口を尖らせた慧さんが、私の口元を親指と人差し指でぎゅっと摘む。先程まで彼の身体で遊んでいた私が言える事ではないが、私の無い肉を無駄に弄ぶのはやめて欲しい。
「恨みはないよ、憎たらしいけどね」
「え、それって何がどう違うの?」
 何だかそんな気分じゃなくて、思わず彼の言葉を無視してそっぽを向いた。
「………もしかして無視してる?」
 私の背中を指でつつきながら、不満げな慧さんがそう尋ねてきた。その言葉すら無視しては何気なく宙を見つめる。

 SEXの後、必ず感じる。異常な程の虚脱感。まるで暗闇の中に包まれたように。
 私はそんな状態に陥るいつもの自分が大嫌いだ。だから一刻も早く一人になりたいと、私を留まらせる彼を無視して来たのに。

 彼の肌に触れる度に感じる熱。
 それは、あの日の私にとって心地いいものだったはずなのに………なぜこんなにも苦しく思えてしまうのだろうか?
「何で俺を避けるのー?」
 慧さんは更に私の腕を引っ張りながら「何で何で〜」と子供のように駄々をこね出した。


 全く、どこまでも無神経なんだから。
 
 小さくため息を付いた私は、渋々彼の方へ寝返りを打ち「うるさい」と彼の額を手の平で軽く叩いてやった。

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