第44話

愛情
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2018/10/01 03:32
「私、何だかとても怠いの」
ㅤ思わず呟いた。隣で眠る彼には、そんな弱音すら届きやしないのだけれど。

ㅤ慧の赤茶色の毛先にそっと指を絡め、梳かしてやる。貴方は確かに此処に居る。私の手の中に。それなのに、何故こんなにも虚しいのだろうか。
「…………慧」
「………ん、何?」
ㅤ彼の頬に指先を滑らせ、彼の名前を呟いた。手を引っ込めようと離れるも、彼の細い手に捕まってしまった。
ㅤごめんね、起こしたかな。彼の手に引かれながら申し訳なく思った私はそう問いかけた。
「ううん、大丈夫」
ㅤ眠たそうに瞼を擦りながら、慧はそう微笑んでくれた。そんな彼の腕に包まれながら、重怠い身体を彼の胸板に預けた。
「………私、どうなっちゃうんだろ」
ㅤ日に日に心に出来た穴が大きく広がっていくような気がして、恐ろしくて堪らなかった。少しでもこの不安を晴らしたくて、今日も彼の家に押し入ったのだけれど。
「大丈夫だって! あなたには俺がいるもん」
「うん………ありがとう」
「それよりさ、ねぇ」
ㅤ私の背中に手を滑らせ、胸元に顔を埋めては「いいでしょ?」と目を潤ませた。胸の間から覗く彼の可愛らしい垂れ目がより私の胸を弾ませる。
「…………うん、いいよ」
ㅤもしも拒否をしてしまえば、嫌われてしまうかも知れない。

ㅤそんな想いがひきりなしに頭を過ぎっていた私は、特に何も考えること無く即答でそう答えた。

「わははっ、ありがとう! あなた大好き!」
ㅤ私の顔をぐいと自分の方へ引き寄せ、舌を侵入させた。彼の舌に合わせて、私も舌先を捩じ込ませる。そんな何でもないような行為ですら、私の秘部が疼き出すのだ。
「んッ、はッ……んん………ふァ、ん………ッ」
「可愛い………もっと鳴いてよ…………」
ㅤもっともっと、彼のくれる愛情に溺れていたい。そう思える程に私は愛情というものに飢えつつあった。

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