彼と初めて身体を重ねたと同時に、私は数々の嘘を重ねてきた。
「俺の事好き?」
そんな裕翔の純粋な問い掛けにすら“嘘”を混じえて答えるようになっていた。
好き、と答える度に思う。裕翔は本当に面白味のない人間だと。
どこまでも純粋で、どこまでも平凡。
つまらない。本当につまらない人間だ。
「好き……だと思う」
彼は私を救ってくれた光のような存在だった。
だが、今の私にはそこらに咲いている名前の無い雑草と同じだった。
いらない。貴方なんかいらない。
今すぐ私を捨ててくれたっていいのに。
「そっか………ありがとう」
………貴方はどこまで馬鹿でお人好しなの?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。