引き寄せられたかと思えば、私の舌に彼の熱い舌が蛇のように絡みつこうと酷く濃厚なキスを交わしてくる。
彼の強引さに付いていけない私は、必死にそのキスに応えようと舌を絡め取る。互いの舌先が触れ合う度に感じる脳内を直接抉られているような感覚に、思わず彼の首に腕を回した。
「初対面の俺に求めて来るなんてどこまで淫乱な猫なんだ?」
「………ん、だって……ッ、気持ち良くて………」
彼の毒針のような冷たい言葉が刺さる度、私の秘部が強く疼き出す。そんな心無い言葉でさえ私の理性を壊す為のエサになる事くらい、彼もとっくに気付いているはずだ。
「―――ねぇ、食べてもいい?」
「………ッ!」
どうやら私、彼の仕掛けた罠に掛かってしまったようだわ。
まるで蜘蛛の糸を操るかのように私の頬をゆっくりと撫で下ろした彼が「綺麗だ」と一言呟き、私の唇に唇を重ねた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「よし、座れ」
ホコリの被ったソファの汚れをそこらの本ではらうと、腰掛け足を組み始めた。が、彼が私に座れと指示したそこは、更にホコリが被る床だった。
「座れって……床じゃない」
「いいから座れ。お前みたいな猫には床の方がお似合いだ」
渋々その場に腰を下ろした私は、眉を顰めながら彼を見上げた。
「ご主人に向かってその態度は何だ?」
「な………ッ、ご主人………ッ!?」
突然の“ご主人”という表現に思わず目を丸くした。どうやら目の前の彼はそういう類いの人間らしく、私をペットの様なものと思い込んでいるらしい。
「………何だ、あの男に躾されてる訳じゃねぇのか」
「誰もが皆貴方のような人間とは限らないでしょ?」
少しの意地悪や焦らす行為は大好きだ。が、さすがに完全な奴隷のように扱われる事は伊野尾先輩もしない為、イマイチピンと来ない私がいる。
「………それもそうか。それなら――――」
「え………ッ?」
私の頬を人差し指でなぞる彼が、私の服を引っ張り寄せ呟いた。その言葉に、思わず私の全身の神経が酷く痺れ出した。
「――――俺が最高のペットに仕上げてやるよ」
彼の顔へと引き寄せられた私は、再び蕩けるような熱い濃厚なキスを何度も何度も……それこそ呼吸がままならなくなる程に何度も重ねたのだった。
――――山田涼介。
この日、彼は私の新しい“セフレ”の一人になった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。