気づきました?
私の家族は、とっくに死んでいるんです。
私が眠りについていたのは、100年間。
その間に、両親も親戚も。
もうこの世にはいなくなったんです。
当然だよね…。
100年も経てば、人も世界も変わってく。
私が目覚めたのは、全く知らない世界だった。
お母さんもお父さんも、優しかった執事さんも、
誰一人としていない世界。
見知らぬ世界に独りぼっちで生きるのは、辛すぎる。
けれど、眠っていれば夢の中で家族に会える。
だから私は願ったの。
『物語が終わらなければ』って……
___________________________
と、溜息をつく眠り姫の足元には、今まで殺してきた
衛兵の姿があった。
じわじわと地面に染みていく血。
また1つ、本の中に衛兵が刻まれた。
眠り姫が小さな欠伸を一つすると、
足元を何かが伝っていった。
眠り姫は笑顔を浮かべ、シュルリシュルリと移動する
蛇の群れを追いかけていった。
憂鬱で眠たい眠り姫。
衛兵の血が染み付いたいばらと共に。
うごめく蛇を追いかけた。
『憂鬱』
それは、姫の心を迷わすいばらの森。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!