第13話

ヘンゼルと狂気 1-③
75
2019/02/01 09:54




















グレーテルは血の海を目の前に立っていた。


























この光景は2回目だっただろうか。

























村人は全員、殺した。






















グレーテルは兄の首が入った箱をギュッと抱きしめた。














グレーテル
人を殺すのってこんなにも
楽しいんですね、兄様。
グレーテル
はまってしまいそうです。












ほんの数分前まで森中に響いた悲鳴も、村人達の死に顔も、










グレーテルの記憶には無い。





















存在するのは、愛しい兄様と、自分だけ。


























グレーテルは、本を開いた。





















本にはさっき殺した村人達のイラストが描かれていた。

















しかし、村人の顔はぼやけていてよく分からない。















グレーテル
まあ、いいか。
グレーテル
兄様とずっと一緒にいる為に、
登場人物を殺さないと。
グレーテル
ですよね、兄様。







グレーテルは再び、箱の中の兄に話しかける。



















返事は、少女にだけ聴こえていた。





































____________________________





































少女の目には、兄しか見えていない。














兄の目は、狂った少女しか見られない。














少女は虚偽の兄と言葉を交わす。













兄は狂った少女を見つめ返す。















決して交わる事の無い2つの線を捻じ曲げて、少女は


兄を愛している。


















狂った少女の物語には『めでたし、めでたし』という

言葉は出てくるのだろうか。
































『狂気』





それは、グレーテルを欺く虚偽の愛。












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