ころんsaid
ガチャ
家に帰ってきた
ドアを開けても
なんの音もしなかった
にいちゃんいないのかな
俺はリビングを覗く
おたまを片手にエプロンを着た兄ちゃんがキッチンに立っていた
まるでなにもなかったかのように普通だった
俺は謝ろうとしたが
やっぱり声が出なかった
にいちゃんの笑顔を見ると涙が出てきた
なんでこんなダメな弟にそんなに気を使ってくれるの?
なんでもっと怒んないの?
どうしてそんなに優しいの?
ぐちゃぐちゃな感情が胸と喉を締め付けまた涙を流す
俺は後ろからにいちゃんに抱きついた
振り返るにいちゃんに涙を見られたくなかったのもあったし
どうしようもなく抱き締めたくなったから
心臓の音がうるさい
にいちゃんに聴こえてるんじゃないかと思うぐらいうるさかった
ん?なんか焦げ臭い?
にいちゃんはカレーを作っていた鍋に飛びつき
肩を落とした
鍋の中には黒くなったカレーがこびりついていた
笑いすぎて涙が出てきた
伝えるのはまだ先でいい
もう少しだけ
この幸せを味わっていたいから
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。