ランドラで行われた聴聞会の後、すぐに待っていたのはクレインの爆裂した説教だった。
ルフィーは、げんなりした。
しかし、クレインが黙るわけはなかった。
ルフィーは服をつかまれ強く揺さぶられる。
心配しすぎたクレインの気持ちは収まりようのない怒りに変わっていた。
きっと、いつものルフィーなら食ってかかって反撃したはずだが、軽く振り払い、苦味渋った顔を向けるだけ、それもすぐに目をそらした。
クレインはルフィーの腕をもう一度掴む。
ルフィーは舌打ちして、クレインを睨むが、やはり言い返そうとはしなかった。
ラウガ「おい、おい、クレイン!ちょっとまてよ💦 」
見かねたラウガは二人の間に割って入る。
おかげで、解放されたルフィーは、ラウガに親指を示し、その場をとっとと逃げ去った。
───
ラウンジのソファーに腰を下ろす。
ふんぞり返って偉そうに振る舞うのは凹んでいるのを悟られまいとしているのか…
離れたところで様子を見ていたレオンは、ドリンクホルダーにカップを二つ差し、それを持って隣にくる。
笑いながら、渡されたカップに口をつける。
レオンもクスッと笑う。
※オースフィッシュ=レオンのお気に入りの酒
必死に戦い、愛機も部隊も失ったが聴聞会では腰抜けと罵倒され、非難を浴び、責任を問われ、挙げ句の果てに手柄はすべてD編特殊戦隊に持っていかれたのだ。
もちろん、レオンがしっかり手を回していた。
外務局局長の令嬢であり、親衛艦隊所属の優秀な参謀官、幼さの残る少女だが、大きな戦略プランニングを幾つもこなしてきたエリート将校、私兵L&P部隊も所有している。
ソファーに反り返って、天井を見つめていたルフィーはムクッと起き上がる!
いつものセリフだ。
興奮してソファーをガシガシ殴る。
一人楽しそうなレオンを見て、ため息混じりに笑うルフィー
そんなものからは縁遠いルフィー、頭の中は?がいっぱいだ。
嫌いと言いながら、何だかんだ、いつもクレインを気にしているんです。
そっぽをむくルフィーをレオンはじっと覗き込む…
そうしたら、またその星でも商売をしようという魂胆だろう。
ブラッセルをこよなく愛するルフィーだが、お世辞でも住み心地のよい国とは言えないようだ。
窓の外に目を向けるレオン。
このファーストビルから見える景色はどこまでも続く軍事施設と演習場の緑、そして遠くの巨大エアポート。沈みかけた夕日がまるで儚げな少女のようにレオンを演出する。
ルフィーはレオンを包み込むようにキラキラと目を輝かす
細い両腕を伸ばしてルフィーの首に巻き付いた。
レオンにはルフィーが生きた凶器というより、動く金塊に見えるようだ、スリスリしている。
ルフィーのほうも誉められて気分がいい。その上、美少女の抱擁は悪くない。
まあ多分、夕日の効果だろう。普段のように押し退けるということもなく、逆にレオンの背中に手を回した。
ルフィーは目を閉じて静かに開いた。
ふっとミレイユの可愛い笑顔が脳裏に浮かぶ…すると、あれこれ あれこれと考えてしまう…。止まらない
急に身体《からだ》を離すとレオンはじっとルフィーを見つめる。
黒伝のバケモノ黒面貘のようなレオン。
すべてを見透かすような その表情にルフィーは恐怖を覚え、寒気すら感じる。
ぐいっとオースフィッシュティを飲み干したレオンの笑顔はいつもの愛くるしい少女のそれだった。
* * *
そんな二人から離れた別階のホールにラウガとクレインがいた。
聴聞会での一部始終をラウガはクレインに話して聞かせた。
クレインは唾を飛ばして、まくし立てる。
ラウガ「ああ、だが下級兵士が生き残ってBトルの基長が死んじまったら…そりゃ俺らは タダでは済まないだろうって-w 軽くて懲罰部隊に二年、悪くすりゃ軍法会議で懲役にぶちこまれるって言われたが…💧」
ラウガ「ルフィーは、お前がパラ公にラチられた時もランドラで取り調べを受けて 行政処分で、二日のトリカゴ〔拘禁刑〕と三ヶ月の謹慎を食らったんだ。あんときも連隊長たちに、お前を置いて逃げ帰ったと散々言われたんだぜ💦 きっと、それもあって目をつけられてる 」
そんなこともあったなぁとクレインの表情はひきつる。
ラウガ「そういや、あの真相はどうなんだよ? お前たちの駆け落ちっていう、笑…まさかな!」
ラウガは興味津々だ。
あの頃は、どうしていいか分からない息苦しい感情に胸を痛めて、訳の分からない自分自身に苦悩した。
ラウガ「そういや、あんときもレオンが討伐隊に引っ張って、ルフィーの出撃停止処分を解除したし、今回だって議長と審議会を黙らせて、やつに救いの手を差し伸べた。レオンは、かなりルフィーに入れ込んでるな 」
ぼんやりと当時の気持ちを振り返っていたクレインだが、
レオン・セシールが突如、頭中に しゃしゃり出て、彼女の無駄に華やかな笑顔が、いやな戦いの記憶を掘り起こさせた。
ラウガ「ルフィーを次のプロジェクトチームに入れるとか?クレインも一緒に行くんだろ?」
ラウガ「ん?ああ、レオンが得意気に話してたぜ 」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。