第10話

Osaka
51
2021/09/17 10:15

俺たちは、吹雪の星に放り出され、今にも目を瞑りそうになる。


U
U
ヒョン…寝ちゃダメ…。


幸いにも、バッグもそこら辺に落ちていた。

吹雪が当たらぬよう、その中に入っていた毛布やブランケットを何枚も重ね、その中で2人して小さく丸まって、暖をとっていた。

しかし、先程俺の肩に乗った時にユトは靴を脱いでいたため、足の裏にはガラスの破片や氷が刺さり、痛々しく血を流している。

そして何よりも、足先から冷えているため、きっと俺より寒い。



E-TION
E-TION
ユト…寒いだろ…俺よりもっと中に入れ…。
男2人だと毛布から体が出てしまうため、ユトがちゃんと包まれるように、十分に毛布をかける。

U
U
ヒョンも寒いですよね…すみません…。

痛みと寒さで、既に事切れそうなか細い声が、心を締め付ける。

カチカチと歯を鳴らしながら、とにかく2人で丸くなるが、段々とお互いの体温も感じなくなってきて、もう温もりで寒さを凌げないほど、お互いの健康状態が良くないことを感じた。


E-TION
E-TION
ユト、お前だけでも生きて帰って…。
このまま2人してししぬのはまずい。

そう思い、ユトに全ての毛布をかける。

U
U
ヒョン…だめ…みんなで帰るんですから…。

ユトが毛布をかけてくれるが、その全てを拒否する。

すると、背中に痛みが走り、苦痛の声が漏れてしまう。

U
U
大丈夫ですか!ヒョン…。
U
U
やっぱり、さっき…。

ユトは今にも泣き出しそうだ。

先程ここに落ちた時、俺はユトを抱きしめて庇ったため、落ちた時に背中を強く打ち付けて、背骨が強く痛めたのだ。

多分、折ったのかもしれない。

E-TION
E-TION
良いよ…俺よりユトのが優秀だし…きっと成果を持ち帰れる…。
U
U
何言ってるんですか?ヒョンのバカ…。


俺は、人の力になりたかった。

いじめられていた時の自分を変えたかった。

助けてくれた先輩に、恩返しがしたかった。

仲間が欲しかった。

ユトが日本国に帰ることになっても、最後まで俺が成長を見守りたかった。



この火星探索の成果を、地球に持ち帰りたかった。






僕が何を言っても、ヒョンは返事をしなくなった。

U
U
ヒョン?ヒョン…?

やはり、返事が無い。

U
U
ヒョン、ダメ…寝ちゃダメ…。

それでも返事は無い。

もう、確かめる方法もない。

自分の指先の感覚が無くて体温を感じないし、吹雪で鼓動も聞こえないし、脈を計ろうとも、自分も震えているのでわからない。


ただ、ヒョンはもう、動かない。

返事もしない。


U
U
ヒョン…ヒョン…!

頬を両手で包んでみても、何も言わない。

U
U
ダメです…寝ちゃダメ…起きて…。

返事は、無い。

毛布を更に深く被って、必死に温めようとする。

U
U
ヒョン…ヒョンが居なくてどうするの…?僕が一人でここから生きて帰れると思ってるの…?いじめられっ子の僕に、そんな自信無いよ…。
U
U
これから僕、どうすれば良いの…
一人でどうすれば良いの…。

他の4人がどうなったのかもわからない。

が、確実に、もしヒョンが本当にこのまま目を覚まさないとして、僕ももう終わりだ。

こんな何も無い状態で、生きていけるはずが無ければ、広大な宇宙で、第三部隊が助けに来る、なんて話もあるはずがないからだ。

U
U
ヒョン…僕ももう…。

ふと、自分のバッグに、出発前に作ってきた、スープがあることに気付く。


バッグの中を開けると、魔法瓶のタンブラーが、確かにそこにあった。


中を開けると、多分緩いくらいの温度だが、此処では信じられないほど暖かく感じて、途端にその湯気で、全身の温度が上がるように感じた。

一口コップに出して、冷える前にすかさず飲むと、ランプの灯りのように、視界が優しくホワッと明るく見えた。



僕はコップにもう一杯注いで、ヒョンの口元に当てる。
U
U
ヒョン。暖かいスープです。飲んで…。

ヒョンの口は動かない。


その一杯を口に含み、口移しでヒョンに渡すと、ヒョンの喉が微かに動き、スープが喉を通っていったようだ。


僕はもう一杯を自分で飲み、もう一杯をヒョンに、また口移しで飲んでもらった。


U
U
ヒョン…起きてください…。

そうして声を何度かかけると、ヒョンが目を覚ます。

E-TION
E-TION
ん…ユト…?
U
U
ヒョン…良かった…。


ザッ


ザッ




毛布越しに、何者かの足音がした。


僕たちは、今度こそ終わったと思い、二人で毛布の外の音に聞き耳を立てる。



すると、毛布をガバッと全て奪われる。



そこには、最初に出会ったクマほどの大きさの巨大なムカデがおり、その触手に付いた口で毛布をむしゃむしゃと貪っていた。




今度こそ、終わったと思った。



せめて、僕は、最期くらい


強い自分になりたい。





自分を襲うそれを見る勇気は流石に無いため、怪物に背を向け、ヒョンを庇うようにして守る体制を取る。


E-TION
E-TION
ユト…なにしてんだ…。


背中の痛みに顔を歪めるヒョンに、最期に一言感謝する。

U
U
ヒョン。ありがとう…僕強くなれたかな…?


怪物の大きな影が、触手を振りかぶったのが見えた。

ヒョンは目を大きく見開いた。




あぁ、みんな。さようなら…。



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