第18話

Moscow
43
2021/10/19 06:48
ルキ
もう、本当にお人好しだよ、君たち…。
巨大なオーグダウスを前にして、ルキが呆れたような声を出す。

ダルタウス
いいえ。契約者様御一行は、正しき人々なのです。人の身代わりになるという考えも、早々に浮かび行動に出るのでしょう。
WYATT
WYATT
その言い方だと、俺らマンネゆととそのお付き人じゃん…。
MK
MK
でもなんか合ってるっちゃ合ってるね。
U
U
もう!恥ずかしいのでやめてください!早くこの状況を打開しましょう。
E-TION
E-TION
おいルキ!あいつにレーザーって効くか?

ルキは肩をすくめる。

ルキ
さぁね。当てたことがないからわからないよ。でも、無駄だろうね。封印の呪文を使わないと無理さ。
WYATT
WYATT
封印の呪文?

ここで初耳のワード。

E-TION
E-TION
その呪文、どうやったら出来るんだ?
ダルタウス
呪文を唱える人物が、魔法陣の上で3回呪文を唱えます。ただ、かなり体力と魔力が必要ですので、数人で唱えるのが理想です。
ダルタウス
場所は、太陽の光が届く場所です。さすれば、太陽光が魔法陣に反射して、その光でオーグダウスを封印できます。
U
U
一筋縄ではいきませんね…。
E-TION
E-TION
一回やってみるか??
ルキ
良いけど、君たちの状態だと、成功して最高4回までしか唱えられないと思う。
MK
MK
ん?何で??
ダルタウス
ミンギュン様とゆうと様は、私たちとの契約でかなり体力も魔力も使っております。失敗する場合もあるので、1回ミスすればもう後がありません。
ダルタウス
ヒョジン様とスンジュン様は、見たところかなり魔力が残っておられました。お二人と合流してから全員で試みた方がいいかと思います。
E-TION
E-TION
マジかよ…この場を凌ぐのは難しいんじゃ…。

オーグダウスが、こちらを見つめる。

そして



オーグダウス
我が子…ルキよ…。
何故人間なんぞといるのだ…。
ダルタウス
…ルキが、子?

場が静まり返る。

ルキ
私が、オーグダウスの、子、、、?

オーグダウスが、一つ目で宇宙船の窓を覗き込む。

オーグダウス
なぜ光の神がいるのだ…早く始末しろ…光は…いらぬ…八つ裂きにして殺せ…。



次の瞬間、真っ黒な得体の知れない空間が、床に広がって、全員が足元を掬われる。

ルキのみ、立っていられるようだが、全員が闇の沼に沈むようで、必死にもがく。

もがくほどに、その闇に堕ちていく。



ダルタウス
ルキ…逃げて!


あの頃と、同じ。


ルキ
嫌だ!僕は逃げない!!

ルキが、ダルタウスの手を取る。


そのシーンを見つめながら、4人は闇に沈んで、


















気づくと、4人で一つの四角い机を囲んでいた。


机の上には、それぞれ1個ずつ、目の前にボタンが置かれている。




そして、それぞれ全員が、その様子を、まるで幽体離脱のように、空中から見つめていた。




チャンユンは、自分が動き出すのを、ただ見守っていた。

チャンユンは、ボタンに手をかける。

嫌な予感がする。

E-TION
E-TION
やめろ!押すな!!


チャンユンは、目の前のボタンを押した。



すると、部屋の壁中に穴が空き、そこから銃が出てくる。

その銃から青、緑、ピンクなどカラフルなボールが発射され、そのボールがチャンユンの体に穴を開ける。


チャンユンは、目を見開いて、自分がしぬ場面を凝視した。



メンバーは、一人として動かず、無言でただ目の前を見ている。






続いて、ジェヨンが動き出す。

ボタンに手をかける。

WYATT
WYATT
だめだ!押すな!!

ジェヨンがボタンを押す。


すると、ジェヨンの立つ壁側に爆発が起こる。

爆発の煙が部屋を覆い、爆風に乗って次第に天井に上がっていくと、ジェヨンが倒れて動かなくなったところが段々と見えてくる。


壁は火花が走って黒焦げになったが、不思議と無事である。


ジェヨンは、ピクリとも動かない。




ここまでくると、ミンギュンとユトも自分がどうなるかわかった。



自分がボタンに手をかけるのを、上から見ているミンギュンは黙って見つめていた。


何処からともなく机の上に、ミンギュンに似た人形と、宇宙柄の迷路のようなボード型のゲーム機が現れる。

ミンギュンがそれを動かすと、イライラ棒のように操作する。

途中でミサイルのような物に当たってしまい、画面には「GAME OVER」と映し出される。


すると、ミンギュンの頭上から大量の紙吹雪が降ってくる。

ヒラヒラと舞う紙吹雪の中、ミンギュンはフッと意識を失い、その場に崩れ落ちて倒れる。




最後に、ユトがボタンを押した。

机の上に、蛍光の緑や青に輝く不気味な液体の入ったグラスが現れる。


ユトは、それに口をつけた。


一口飲んだところで、ユトがそれを口から吐き出す。

むせ込んで、咳が止まらない。


ユトは苦しむ自分を、涙を流しながら見つめていた。

すると、ユトの体が燃え、一瞬で炎に包まれる。


倒れたユトは、動かない。



全員が、動かなくなった自分たちを見て、どうすることもできずにいた。




すると、気付いたら机にヒョジンが立っていた。

黒い布で目隠しをされ、ボーッと天井を見つめている。


次に、何処からともなくスンジュンが現れる。



スンジュンは、背負っていたライフルを構えて、ヒョジンに標準を合わせる。




U
U
やめて!
MK
MK
ダメェ!!
WYATT
WYATT
ヒョン!だめだ!!
E-TION
E-TION
スンジュン!やめろ!目を覚ませ!!

スンジュンが引き金を引くと、空間がスローモーションになる。


弾丸がゆっくりとヒョジンに向かう。


E-TION
E-TION
やめろぉぉぉ!!!!



その弾丸は、ヒョジンを貫いた。


真っ赤な鮮血が走り、壁を濡らす。


先程までしなかった血の匂いが、部屋に充満する。



ヒョジンは膝から崩れて、机から落ちる。















ライフルを構え、悪魔に1発発砲する。


数台の悪魔を、弾丸が貫く。


悪魔たちは警戒するようにスンジュンに距離を取る。

J-US
J-US
どうした?怖いのか?
J-US
J-US
俺は必ず仲間を返してもらう。そのためには、引き金はいくらでも引く。たとえ、俺が残酷に見えようとも。

もう1発、悪魔に発砲する。


飛び回っていた悪魔が残り1匹となり、その1匹は逃げる選択を選ぶ。


スンジュンは、その悪魔に標準を合わせたが、打つことが出来ない。

良心がそうさせる。


J-US
J-US
…もういい。今はとにかく、魔法陣を。


先ほどから、光は消えそうになっている。


兄の手帳から呪文を見つけ、試しに唱えてみようと思った。


その時。


黒い靄が現れて、そこからルキと、ルキに抱き抱えられたダルタウスが出てくる。

ダルタウスは目を閉じており、起きる様子はない。


J-US
J-US
ルキ…?


ルキは、虚な目をして言う。


ルキ
私は、闇を操る邪神だ。しかし、私を生み出した親が、まさかオーグダウスだなんて…。


スンジュンは、話の内容をすぐに理解する。


J-US
J-US
ルキ、落ち着け。俺たちはみんな、お前を信じてるから。

ルキは、泣き崩れる。

ルキ
あんまりだ…そんなの…。
ルキ
ダルタウスは、僕が邪神だと知りながら、それでも信じてくれていたのに。僕があんな化け物の子だと知られて…もう誰も、僕を信じてくれない…。


ルキは、魂が抜けたように動かなくなる。

虚な目で、黙ってダルタウスに視線を落とす。



J-US
J-US
しっかりしろ!なぁルキ。俺、呪文を唱えたいんだ。みんなに繋がる光が弱くなってる。早く助けないと!
J-US
J-US
だから、協力してくれ!
ルキ
…。
ルキ
僕に、何ができるって言うんだ

目線も合わせず返事をするルキに、スンジュンが声を荒げる。


J-US
J-US
何言ってんだ!俺たちのこと、何度も助けてくれたじゃねぇか!
J-US
J-US
今こそ、ルキが必要なんだよ!目覚ませよ!
J-US
J-US
ミンギュンはどうなったんだよ?契約者がいないと宇宙にいれないんだろ?

ルキと、目が合う。


ルキ
僕は、闇に染まっている。

沈黙が訪れる。

それを破るように告げる。

J-US
J-US
関係無い。
ルキ
僕は、全てを壊すよ。宇宙も天界も。
オーグダウスと一緒だ。
J-US
J-US
お前がそうしなければ良いだけだ。


ルキは無言でいたが、意を決したように話し出す。


ルキ
すまない。僕と、契約をしてくれ。


ルキがスンジュンに触れる。

J-US
J-US
…そうすれば、みんなを救えるのか?


ルキが頷いた。


スンジュンも、黙って頷く。



すると、スンジュンの頭の中に、膨大な情報が入ってくる。

その宇宙の真理に気付いてしまい、頭が破裂しそうに痛み、呼吸がうまくできない。



人間は、神から見たらペットだ。

宇宙とは、ペットのゲージ。

大きな大きな神々が、宇宙の中で生きる人間を見て、餌を与え、試練を与え、笑いながら見ている。



ルキであれオーグダウスであれ、人間を殺そうと思えば容易いことである。

今、そのオーグダウスが目覚め、同じ破壊神のルキは目の前にいる。



ルキ
僕を恐ろしいと思うかい…?

それでも、平気な表情でスンジュンは答える。

J-US
J-US
別に。俺はびびんないし。


ルキが笑う。


ルキ
じゃあいいね。さぁ、新しいご主人。君の寿命と引き換えに、僕に命令をしてくれ。


スンジュンは、ルキにお願いをする。

J-US
J-US
みんなを、ここに集めてくれ。

ルキが右手を振ると、5人が現れる。


チャンユンは身体中から血を流し、ジェヨンは爆発に巻き込まれたように服も体もボロボロで、ミンギュンは無傷だが顔色から息が無いとわかり、ユトは炎で焼かれたようである。

不可解にも、ヒョジンは悪魔たちにやられたようでなく、胸に貫通した銃弾の跡があった。


J-US
J-US
これは…。
ルキ
残酷だろう。みんなオーグダウスの魔術によって、死の世界を彷徨っている。人は死んだら天界にて、次の魂として生まれ変わる契約を交わす。
ルキ
だがオーグダウスの魔術によって、死の世界に飛ばされている。魂がここから帰って来なければ、もう二度とこの世界に帰ってくることも、死んで生まれ変わることもできない。魂は永遠に彷徨い続けるんだ。彼らは悪夢を見ている。
J-US
J-US
じゃあ、すぐにでも助けないと!ルキ、どうすればいい?


ルキは俯く。


ルキ
ごめん。僕にも、オーグダウスの魔術に対抗する魔法が無い。それだけこれは上等な魔術なんだ。
J-US
J-US
そんな…。

スンジュンはあっけない結果を知り、絶望する。

何か手はないのか。

考えていると、魔法陣が再び光だし、ミンギュンの手元に光が差す。



そこには、あの映写機が握られている。


J-US
J-US
これ…ミンギュンの…。


スンジュンがそれを覗き込むと、そこには、机を囲んで倒れている5人がいた。


そして驚くことに、ライフルを持った自分がいた。


その手に持っているライフルの銃口から煙が一筋出ていて、その対角線に、胸に穴を開けて息絶えているヒョジンが倒れている。


まさか、自分がヒョジンを…?


目の前の自分がまた歩き出し、ヒョジンに再び銃口を向ける。
J-US
J-US
やめろぉ!!


すると、死の世界の時間が止まる。

銃口の煙も、スンジュンも、止まっている。



そして不思議なことに、スンジュンは死の世界に降り立った。


J-US
J-US
え?何で俺、ここに…?

ルキの声も届かない。


スンジュンが動いても、時間が再び動くことはない。


J-US
J-US
どうすれば…?


スンジュンは心の中で、ルキに呼びかける。


J-US
J-US
ルキ。時間を戻せないか?



すると、机の中央に、古い時計が出現する。


スンジュンが時計の裏面のダイヤルを反時計回りに回すと、ヒョジンが巻き戻しに机に乗り、銃弾がライフルに戻っていく。



気付いたら、壁が透明になり、無限の暗闇が続いている。
その壁の中に4人がいる。


見えない壁に阻まれて、その壁を叩きながら、自分に訴えかけている。


部屋にいるユトの体を包む炎が次第に消え、蛍光の青緑色の液体を吐き出し、カップを机に置く。

ユトの涙が頬を上がっていき、彼が目を閉じるとその涙が目元に吸い込まれてまつ毛が揺れる。


部屋にいるミンギュンが起き上がり、目を開ける。机の上のゲームはGAME OVERの文字を消して、振り出しに戻る。

ぎゅっと目を閉じていたミンギュンが、ゆっくりその瞳を開けると、水を含んで宇宙の星のように光る。


煙と爆風が巻き戻り、部屋にいるジェヨンを襲った爆発も巻き戻る。

ジェヨンはその壁を破ろうと、痛々しくも何度も必死に壁を叩く。


部屋中にばら撒かれたカラフルなボールが部屋にいるチャンユン目掛けて戻っていき、その体に空いた穴が塞がり、ボールは壁から現れた銃に戻っていく。

チャンユンは絶望の表情で自分を見つめていて、巻き戻ると自分に訴えかけるように叫び、次第にいつもの表情に戻る。

J-US
J-US
みんな…!!


スンジュンが時計を置くと、また時間が進む。


無表情のチャンユンが、ボタンを押すために机に一歩を踏み出す。


J-US
J-US
起きろ!目を覚ませ!!

スンジュンがボタンを投げ飛ばす。



部屋に散らばったボタンは、黒いモヤを纏い消えた。


5人全員がフッと意識を飛ばし、倒れ込む。


机の上のヒョジンを支える。



気付くと壁は透明ではなくなり、壁の中にいた4人もいない。




抱えたヒョジンが、ゆっくり目を開ける。
J-US
J-US
ヒョジン!
ヒョジン
ヒョジン
あれ…?さっきのは…嘘…?
ヒョジン
ヒョジン
俺の、悪夢…?
ヒョジン
ヒョジン
みんなは…?
J-US
J-US
もう大丈夫だ!心配するな。
J-US
J-US
ここから逃げよう。


ヒョジンが拳を前に出す。


それに答えるように、スンジュンも拳をぶつける。





すると、視界が明るくなり、脳内にダルタウスの声が聞こえた。




ダルタウス
今こそ、共に戦いましょう。戦士たちよ。







目覚めると、6人は宇宙にいた。

信じられないことに、そこに浮遊していて、息もできる。



目の前には、信じられない大きさのオーグダウス。


まるでクジラのように大きい。

目が、自分たちの大きさほどある。


ダルタウス
みなさん!ご無事でしたか?
ダルタウスがいる。

J-US
J-US
ダルタウス!無事だったのか!?
ダルタウス
私は…でも、ルキが…。

オーグダウスが喋る。

オーグダウス
始めるぞ。ルキ。


自分たちの間に、黒い靄が現れる。


その靄から姿を現したのは、下半身がタコのような触手、片腕はカニのような大きなハサミで、上半身からはムカデのような脚が何本も生えた、自分たちの知るルキとは程遠い見た目の怪物だった。



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