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2021/09/11

第7話

Peking
火星に飛び立つ2時間前。


トイレに行った帰り、廊下の窓から空を見上げているジェヨンを見かける。

ヒョジン
ヒョジン
あれ?休まなくて良いのか?
WYATT
WYATT
あぁ、ヒョジニヒョン。
頭をかいて、何となく気だるそうな様子。

ヒョジン
ヒョジン
どした?

ジェヨンは、うーん、と唸り、話し出す。


WYATT
WYATT
ミンギュンと話してて、疲れない?
ヒョジン
ヒョジン
…は?

どんな質問なんだ、それ…。

ヒョジン
ヒョジン
まぁ、疲れるけど、良い子じゃないか?


ジェヨンは、ホッとした顔で、胸を撫で下ろす。


WYATT
WYATT
俺、本当は宇宙探索に興味ないんだ。
無いんだけど…。
ヒョジン
ヒョジン
??
WYATT
WYATT
俺、実はミンギュンに頼まれて、一緒に試験受けたんだ。


それはつまり

どういうことだ??

ヒョジン
ヒョジン
マジかよ!本気で勉強してる奴もいるのに、普通に受かったのか!?凄いなお前!
WYATT
WYATT
いや、それほどでもないんだけど…。
ヒョジン
ヒョジン
んで、何でミンギュンに頼まれただけで?
試験料も数万するのに。

更に唸るジェヨン。

WYATT
WYATT
俺にもわかんないんだ、それが。
WYATT
WYATT
俺、宇宙って、無限に広がってて、終わりがなくて、誰もが到達したことのない空間ってイメージがあってさ。それをミンギュンと見に行ったら、俺、きっと自分の中で、忘れられない記憶になると思ったんだ。
WYATT
WYATT
ミンギュンが、真面目で遊びを知らなかった俺に、自由に生きることを教えてくれたんだ。あいつとなら、世界旅行でも、宇宙旅行でも、行ってみたくてさ。しかもあいつおっちょこちょいだから、心配だったんだよ。
ヒョジン
ヒョジン
ふーん。


ジェヨンは、空を見ながら話す。

WYATT
WYATT
俺、今回の宇宙探索で、自分が宇宙探索員に相応しいのか、自分を確かめたいんだ。
WYATT
WYATT
受験とか就活とかってそうだろ?明確な動機がなくても、学校には行かなきゃならない。働かなきゃならない。だけど俺は、そんな中途半端にしたくない。
WYATT
WYATT
俺を変えてくれたミンギュンが夢を抱く宇宙は、どれだけ魅力的なのか、この目で確かめたい。宇宙の本当の姿を、見たい。


ジェヨンの今回の宇宙探索は、第一部隊を見つける他に、明確にしたくとも明確にできない気持ちを目標としているらしい。

ヒョジン
ヒョジン
お前、どんだけミンギュンを信用してるんだ?

質問するが

WYATT
WYATT
…わからない。ただ、友達。

素直ではないらしい。










一応と思い、ミンギュンにも、今回の火星探索への意気込みを聞きにきた。

ミンギュンは教室の窓から、音声無しの映像を収められるハンディタイプの映写機で、グラウンドで行われる野球の公式試合を撮っている最中だった。


MK
MK
ごめん。あとちょっと。今いいところで…。


空振り三振!スリーアウト!!




バッターボックスに立つ生徒は、バットを手から落とし、落胆した。


最終回の9回裏、1点ビハインド、2アウト2・3塁。

1発が出れば、逆転サヨナラの場面。

バットは空を切り、逆転は叶わず。

ピッチャーと守備の選手が集まり、みな抱き合って喜び合っていた。


夏の公式戦。負けたのは、うちの学校である。

MK
MK
あーあ、夏が終わった…。

もう秋が近い。

日中とは違い、日が暮れてくると途端に寒くなる時期だ。

そして、日が暮れるのも早い。



夏は、終わりに近い。


MK
MK
良いよ。なーに?
ヒョジン
ヒョジン
あぁ、ミンギュンはさ、何で宇宙探索隊になったんだ?

ミンギュンは、うーんと考えながら、いつもと変わらない様子で話す。
MK
MK
俺、宇宙の全てが知りたいんだよね。どこまで続いてるのかとか、宇宙の中の地球ってどんな大きさなのかとか。他の星に生命はあるのかとか。
ヒョジン
ヒョジン
成る程。じゃあ、第一部隊捜索ではなくて、宇宙探索志望だったのか?
MK
MK
そうだね。元々そっちで受験して、今回第二部隊として招集された。

宇宙の全てが知りたい。

多くの探索隊が探索隊志望理由としてあげる例だ。

MK
MK
んでさ、見返してやりたい奴もいるんだよね。俺、最終試験で1回落ちたことがあるんだよ。
ヒョジン
ヒョジン
あぁ、捨てグルだったのか。
MK
MK
…捨てグルって?
ヒョジン
ヒョジン
チームワーク試験では、試験官は全員に同一点数を付けてる。だから、誰かが誰かを減点しない限り、一人も落ちることのないテストなんだ。
ヒョジン
ヒョジン
だから、誰かが落ちると言うことは、全員のチームワークがまだ良くないってことだ。よって、誰か一人でも落ちると、他の受験者も連帯責任で全員落ちるシステムだ。
MK
MK
知らなかった…。

ミンギュンは何かを考えているようだ。

MK
MK
たしかに、俺、ジェヨンと同じグループだったんだけど、あいつが「全員で受かろう」って声かけてくれたんだ。みんな全員に満点付けたって言ってた。
ヒョジン
ヒョジン
ジェヨンと一緒で良かったな。
MK
MK
…。
ヒョジン
ヒョジン
どうした?黙り込んで。

ミンギュンは、複雑な表情だ。


MK
MK
俺、本当にジェヨンに救われたかも。過去の経験から魔がさして、ジェヨン以外のメンバーを、減点しようかと思ったんだ。
ヒョジン
ヒョジン
…危なかったな。

ミンギュンは、エクボを深く刻んで苦笑いする。

MK
MK
俺、よっぽどトラウマだったのかな…自分だけ落ちたの…。ほんと、ジェヨンがいてくれて良かった。
MK
MK
俺、もしかしたら、まだ本気でみんなに心開いてないのかもしれない。あの時のことを思い出すと、なかなかみんなに本心で話ができない。俺って変わり者だし…。

ミンギュンは、ジェヨンと同じように宇宙の全てが知りたいらしいが、それ以上に、仲間を欲しがっているように、俺は感じた。


ヒョジン
ヒョジン
ううん。お前は凄くうるさいけど、面白い奴だ。
ヒョジン
ヒョジン
あと、放っておけない。
ぴょんっと飛び出た髪の毛の束を発見した。

それを撫でるようにして整えてあげると、ミンギュンは眉をハの字にして泣くのではないかという複雑な表情で、俺を見てくる。

MK
MK
俺、足手まといにならないかな?

いろんな感情を持っていたらしい。

いつもと違って、弱々しいミンギュンが目の前に立っている。


ヒョジン
ヒョジン
ならないよ。ちょっとスンジュンが頑固になっちゃってるけど、大丈夫。みんなお前を仲間と思ってるし、スンジュンもすぐに俺の知るあいつに戻るよ。怪我だけしないようにな。

背中をぽんぽんと叩くと、背の高いはずのミンギュンが小さくなって、俺の肩に猫のようにグリグリと頭を擦り付けてきた。

下を向いたままのミンギュンから、鼻を啜る音が聞こえてきたので、黙って頭を撫でてやると、彼は静かに嗚咽を漏らしたのだった。