第15話

End of the Universe
42
2021/10/05 04:12


建物の外に出て、教授を生き返らせることは出来ないのか、ダルタウスに尋ねる。


ダルタウス
申し訳ございません。わたくしは、癒しを授けることは出来ますが、生命を生き返らせる能力は、余程でないと使えません。
ヒョジン
ヒョジン
…いや、仕方ない。大丈夫です。


ダメか…。


ダルタウス
このお方が、ルキと契約を結んだようですね。それで、下界にルキが逃げた。
ヒョジン
ヒョジン
父さんが、契約を?

どう言うことだ?

ダルタウス
えぇ。彼の記憶を辿ると、かなり壮絶ですね。ルキが遊び半分で意図的に地球に投げ込んだアーティファクトを、若き頃にたまたま公園で拾っています。このアーティファクトは、ハンドタイプの映写機のような見た目で、思い描く場所や時代を覗き見ることができます。
ダルタウス
賢いのでしょうね。すぐに使い方がわかった彼は、宇宙を見てしまった。そして、オグルトゥスを崇拝する悪魔たちが、オグルトゥスを目覚めさせようと暗躍していること、地球が狙われていることを知り、近しい人を巻き込まんと一人でアーティファクトからルキと契約を結び、宇宙探索の組織に入り、火星へと飛び立った。
ダルタウス
ルキと契約を交わして、精神を削りすぎてしまったのでしょう。寿命と引き換えに、ルキの魔力を借りて研究をしていたのかもしれません。


教授が、そんなことを。


ダルタウス
火星探索の裏で、オグルトゥスを目覚めさせない方法を探していた。そして、火星に行くまでの間で、オグルトゥスに遭遇した。ルキと契約を交わしていたことで自身の魔力も高まっていたのでしょう。その魔力に触発されてオグルトゥスが目を覚まし、宇宙船を襲った。そして、お二人と同じように、宇宙船はバラバラになった。宇宙に放り出される者、この星に降り立った者。誰が火星に到達したのか…。


教授


ヒョジンの親父さん




一人で地球を護ろうと…。

そして、あの怪物に襲われて、第一部隊はバラバラに…。



ヒョジン
ヒョジン
スンジュン…ごめん。
ヒョジン
ヒョジン
父さんが、お前のヒョンも、みんなも、巻き込んだのかもしれない…。


なんだよ、そのセリフ…。


J-US
J-US
何言ってんだ。教授がいなかったら、今頃地球終わってんだぜ?俺たち、親父さんに救われたんだよ。
J-US
J-US
みんなを探そう。4人を。絶対に、みんな無事に帰るんだ。んで、第一部隊も探さないと。
J-US
J-US
俺らの任務、だろ?
ヒョジン
ヒョジン
…あぁ。

俺らを見て、ダルタウスが笑う。

ダルタウス
お二人のチームワーク、よほど良さそうですね。わたくしも連れて行ってくださいね。
ヒョジン
ヒョジン
もちろん!
J-US
J-US
もちろん!


俺とヒョジンが、元気よく返事した。















U
U
これは…。
WYATT
WYATT
ひどい…。


吹雪の中、見つけた宇宙船。


墜落した船は、雪をかぶって真っ白になっている。



その船から振り落とされたように、宇宙探索隊の制服を着た人物が1、2、3人、あたりに倒れている。


寒さで遺体は腐らない。

まるで生きているように、亡くなる直前の姿のまま、息を引き取っている。


E-TION
E-TION
間違いない。第一部隊の3人だ…。
MK
MK
痛そう…ひどい…辛かったよね…。


ミンギュンがそのうちの一人の頬に触れると、弾力のない硬い肌は、カチカチに凍っていて冷たかった。


E-TION
E-TION
これは…もう無理だ。


全員が落胆する。



無言で手を合わせるジェヨン

生きていないのをわかっていて、何度も脈を確かめるミンギュン

無言で立ち尽くすユト




すると、宇宙船の瓦礫の中から、何やら音がする。

ルキ
おっと、厄介な奴らがうじゃうじゃいるね。

その中から、真っ黒なもやを纏った、まるでゾンビに虫の羽が生えたような、君の悪い怪物が現れる。

U
U
う…何ですか、あれ…。
ルキ
あれは悪魔だ。気色悪いね、触れたくもない。

ルキが、怪物とチャンユン達の間に立つ。


ルキ
ご主人、寿命3年と引き換えでどうかな?

ざっと見たところ、7体ほどいるようだ。


MK
MK
お願い、倒して!


その声を聞くと、ルキは口角を上げて笑う。


ルキ
命の味がする…堪らないね…。

ミンギュンは、一瞬胸を押さえて息が止まるが、また呼吸が戻る。


WYATT
WYATT
おい、お前の大切な命なんだから、無理すんなよ!

ジェヨンが支えるが、ミンギュンは手で制す。

MK
MK
平気…。あんな怪物達、俺たちじゃ相手できないでしょ。だからルキに頼んでんだから。
WYATT
WYATT
逃げるだとか、方法はあるだろ!

ミンギュンがジェヨンを見つめる。

その瞳は、宇宙の星のように煌めいている。

MK
MK
俺、みんなのためなら頑張れるよ…。


ルキが怪物達に飛びかかる。

彼の腕が鉄のランスの様な形に変わる。


次々に、怪物達を突き刺し、薙ぎ払い、華麗に舞う様に飛びかかるルキに、怪物の血なのか、紫色の体液が飛び散る。


U
U
うっ、、
E-TION
E-TION
ユト!大丈夫か!?

気分が悪くなったようで、ユトがその場にしゃがむ。

怪物達が、背を向けて逃げ出す。


しかしルキの猛追は、まだ終わらない。
WYATT
WYATT
おい!ミンギュナ!!ルキを止めろ!!


ミンギュンは、苦しそうに膝をつく。


E-TION
E-TION
ルキ!もうやめろ!!







あたり一面、怪物達の死骸が転がる。

ルキは、全ての怪物を襲い、主人の元へ戻ってくる。

ルキ
ご主人。追加の寿命、ありがとう。
E-TION
E-TION
は!?追加!?
WYATT
WYATT
おい…!無理しすぎだっての!!


ジェヨンが、ミンギュンの肩を掴む。

U
U
ヒョンやめて!落ち着いてください!

ユトが仲裁に入る。


U
U
ルキさん。あなたやり過ぎです。

ルキが、クスクスと笑う。

ルキ
私は、主の命に従ったまでだ。
WYATT
WYATT
ミンギュン。あのな…
MK
MK
時間がないんだ!!



あたりが静まり返る。


U
U
どういうことですか?説明してくれませんか?


ミンギュンが話し出す。


MK
MK
俺、ルキと脳内まで共有してる。宇宙の全てが見えてて、俺たちを襲ったカエルみたいな化け物が、地球を襲おうとしてるのも見えた。
MK
MK
俺!みんなと別れたくない!バラバラにもなりたくない!!第一部隊も見つけて、みんなで地球に帰りたい!!
ぼろぼろとミンギュンが泣き出す。


MK
MK
おれたち、無事に帰れなかったら?帰る時、地球無くなってたら?地球に帰ったら、怪物達に支配されていたら?
MK
MK
俺…そんなのやだ…やっとみんなに出会えたのに…。







「ミンギュン。どうして良い子に出来ないんだ?」




幼少期、先生に言われたこと。

僕は悪くない。

同級生が、野良猫をいじめてたんだ。

だから、俺が成敗したんだ。

俺は、悪くない。





「ミンギュン、何を伝えたいのかわからないよ。もっとわかりやすく説明して。」




俺、自分ではわかりやすく説明してるつもりなんだけど…。他に説明のしようがないよ。




「ミンギュン!またお前は悪いことを」




また俺?…もういい。

MK
MK
なんすか?



俺は、席を立ち、教団の上の俺より背の低い教師を上から睨みつける。


教室中の視線を浴びる。


めんどい。
まぁ、俺って変わり者だし仕方ない。
理解なんてされない。

理解なんてされたくない。







「おい!くたばるのかー?」




帰り道、同じ中等校の制服を着た男子生徒が、死にそうな野良猫に罵声を浴びせる場面に出くわす。


「おい!聞いてんのかー?このままだとしぬぞー」



ゲラゲラ笑っている3人組。

最低。




しかし俺は、幼少期を思い出す。

俺は、野良猫を虐めている同級生に殴りかかり、教師や同級生の親に怒られた。

家に来た同級生とその親に怒鳴られている俺の母が、玄関で必死に頭を下げていた。

母は、俺を責めなかった。



最低なのは、俺かもしれない。

俺は、野良猫を、無視した。


黙って、通り過ぎようと思った。


WYATT
WYATT
何してんだ!!


別の中等校の生徒。


「なんだよ。邪魔すんなよ!」


WYATT
WYATT
お前らは、この子猫を見て心が痛まないのかよ?最低な奴らだ。
WYATT
WYATT
お前らに、生き物の命は大切に出来ない。今後ペットを飼うな。子供も、お前らのような奴らじゃ育てられないから、一生一人で生きていけ。


「はぁ?なんの話してんの?」


WYATT
WYATT
お前らみてぇな奴らは、他人の命を大切に出来ないって言ってんの。子猫を木の枝で突いたろ。石を投げつけただろ。助けなかっただろ。最低な奴らだ。
WYATT
WYATT
失せろよ。子猫が怖がってるだろ。


「はぁ?真面目君が説教ですか?弱いお前に何が出来るんだよ!?」


3人組の一人が、その男子生徒を殴る。

しかし、その男子生徒は、子猫が怖がらないように、しっかり両手で抱きしめている。


何してんだ。子猫を下ろして殴り返せよ。



「こいつ弱ぇくせに、口ばっかじゃねぇか」



何してんだよもう。見逃せないじゃないか。



MK
MK
やめろよ。


「うわっ…パクミンギュンじゃん。」


「帰ろうぜ。めんどくせぇやつだ。」


「こいつ、同じクラスの奴らの財布漁ったらしいぜ。それ見つかったけど、教師に高圧的な態度とったブラックリストだってよ俺らよりヤベェやつ。」


クスクス。



WYATT
WYATT
ごめん。ありがとう。
MK
MK
子猫下ろせば殴り返せただろ。何してんだよ。
WYATT
WYATT
や。子猫が寒そうだから、なるべく暖めてあげたくて。


何なのこいつ。


何なの。

WYATT
WYATT
君さ、本当に財布泥棒なの?
WYATT
WYATT
俺には、そうは思えない。



何なの、ほんと。



MK
MK
…。
WYATT
WYATT
あ、待てって。この猫、
MK
MK
俺が育てる。
WYATT
WYATT
え、
MK
MK
俺ん家、猫1匹と犬1匹飼ってる。だから育て方わかる。

その男子生徒は、笑顔になる。

WYATT
WYATT
悪い。じゃ、頼むわ。

俺が無視して、背を向けると、背後から声がする。

WYATT
WYATT
俺、毎日ここで、この時間に待ってる!子猫が元気になったら、俺に教えてよ!

こんな奴がいるなんて、知らなかった。

こんなに優しい奴が今までいただろうか。



しかし俺は、会いに行かなかった。

子猫は、病院で診てもらい、シャンプーやブラッシングで何とか綺麗な見た目になったが、口を怪我していたため、うまく開けられなかったのだろう。


餓死だった。



俺は、あいつに言いに行けなかった。

子猫は元気だと嘘をつくこともできたはずだが

俺は、あいつに嘘をつきたくなかった。

かといって、あいつが悲しむのも見たくなかった。



そして、高等校の入学式。

俺は、あいつに出会った。


幼少期に引っ越してしまった仲が良かった友達にも再会し、髪も切ってる俺は、あの頃とは別人だ。



俺から話しかけないと。

MK
MK
ねねね!君ダンスやってるんだよね?俺も!


急に話しかけたから、驚いた様子だった。


でも、あの時と同じで、俺を変な奴とは思ってないだろう。

誰にでも、優しい目線。あの頃と変わらない。


シム・ジェヨン…て名前なんだ。












WYATT
WYATT
ミンギュン、落ち着け。


ミンギュンの涙は止まらない。

MK
MK
俺、自分が帰れなくても、みんなは無事でいてほしい…みんなは無事で地球に帰ってほしい…。
WYATT
WYATT
何言ってんだよ…お前…。みんなで帰ればいいだろ。みんな一緒だよ。
E-TION
E-TION
まぁ、なんだ…考えすぎるな。俺たち一緒にいるから。ヒョジンと…スンジュンはまぁ、お兄さんと第一部隊のことでいっぱいいっぱいなんだろうな。でもすぐ、心開いてくれるよ。お前が素直なままでいてくれるならな。
U
U
僕怖がりなんですけど、我慢して逃げないようにって、ここに立ってます。ヒョンは僕より体格も良いのに、何が不安なんですか?しっかりしてくださいよ!

ユトがミンギュンの背中を両手のひらでぱしんと叩く。


E-TION
E-TION
そうだぞ!ユトは怖い映画観たら一人でトイレ行けないんだぞ。さっき吐きそうだったもんね。
U
U
そんないらない事言わないでください…今言う事じゃないし…。

ユトが静かに鋭い目線を、チャンユンに投げかける。

あ、ミアネ、ミアネ…。とチャンユンがススス…とユトから離れる。


ルキ
ご主人…あなたは、なぜ自分を犠牲にしてでも、他の人間のことを思うのだ?
ルキ
私には、あなたの考えが、理解できない。


ミンギュンは、涙を拭いながら、答える。

MK
MK
俺、人のこと信じれない。過去に嫌な思いしたり、仲間外れにされたような思いもした。でもさ、みんなは違うんだ。
MK
MK
ジェヨンとは、ずっと仲良しでいてくれるし、一緒に辛い勉強乗り越えたチャンユニヒョンとユトも、俺にとって、特別。
MK
MK
だから、俺らのリーダーであるヒョジニヒョンとスンジュニヒョンも、特別。

周りの3人も、ニコニコと笑う。

MK
MK
もちろん、ルキも特別だよ。俺たちのこと、助けてくれるからね。
ルキ
な、何言ってるんだい?君は自分の寿命を代償にしているんだよ?
MK
MK
そうだけど、助けてはくれてるじゃん?

ルキは、呆れたように、肩をすくめる。

ルキ
はぁー。君ってお人好しだね。いつか騙されて苦労するよ。
MK
MK
いいよ。その時は、ルキに助けてもらうもん。
ルキ
別に、助けてるわけじゃ…。

ルキがミンギュンを見つめると、一瞬、ミンギュンの瞳がキラキラと星空のように輝いたように見えた。


あいつと、同じ。


ダルタウスと。


ルキ
はぁ。君には敵わないね。ま、さすがは僕の主人だね。
MK
MK
なーに?それって褒められてる??
ルキ
当たり前だろう。僕の契約者なのだから、高貴でなければならないだろう?
MK
MK
よくわかんねー。

他の3人が、クスクス笑う。


ルキ
な、なんで笑うんだい?ご主人、君のせいだよ!
MK
MK
え、何が?

まんまとミンギュンのペースになっている。

それを見て、3人はまた笑い出す。



ルキ
…!!もういい!!

ルキがそっぽを向く。




ダルタウス。


私がもっと良い子でいたら

君とまだ、友達でいれたのかな。


主はこんなことを言っているが

本当の私を知っても、私を仲間と思ってくれるのだろうか?


宇宙の、そのあまりに強大な闇が世界を啄んでいて

それを知ってしまった主は

それでも俺を見捨てないだろうか。


俺は、主を、この者たちを

信じて良いのだろうか。









わからない。

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