第11話

Goyang
49
2021/09/19 15:47


下へ下へと落ちていく


俺とミンギュンの乗る右半分の船体を切り捨てる様に、宇宙船は真っ二つになった。

MK
MK
飛び移らなきゃ!!
WYATT
WYATT
よせミンギュナ!!もう無理だ!!


もう届くことのない、ヒョンたちの乗る宇宙船を見上げた。

船体は回転し、自分たちの視界も回転する。


MK
MK
うっ!うっ、、!
WYATT
WYATT
くっ、うぅっ、!
目が回る。


船に体を強く打ち付けて、二人して苦痛の声が漏れる。



船体が地面に叩きつけられるが、俺たちは運が良いのか、悪いのか。

緊急時のエアバッグが展開したため、地面に叩きつけられることはなく、しかし、潰れた船体に挟まれ、天井部分の下敷きとなった。

激しく砂埃が舞う。




災害時のガイドでは、こういう時は大声を出さず、音の出る物で自分の位置を知らせ、助けを待つという。

だが、今の俺たちの手にはポータブルも無ければ、助けに来る人間もいない。


灼熱の砂漠で、俺とミンギュンは、宇宙船の瓦礫の中に埋もれ、身動きが取れなくなった。





このままだと、やばい。

いくら俺でもわかる。



一筋の汗が、頬を伝って顎に落ちる。

また別の汗が顎に落ち、次から次へと落ちる汗が止まらない。



俺がいけないんだ。


俺が、ジェヨンを火星探索に誘ってなければ、まだマシだったはず。


俺だけがこの砂漠で遭難すれば。

こんな罪悪感も無かったし、ジェヨンも無事で、今頃学校に行って…。

WYATT
WYATT
おい…何泣いてんだよ…ㅎ
泣いたら水分奪われるぞ。
ジェヨンの腕が伸びてきて、俺の涙をすくう。


MK
MK
ごめん。俺が試験受けてって言ったから…一緒に行こうって誘ったから…ごめん…。


今までの人生で、一番情けない自分だ。


あの日より。


一人で試験に落ちたあの日より。



確かに俺はあの日から、

一緒に夢に向かって共にする

仲間が欲しかったのかもしれない。


ジェヨンと一緒に火星探索の夢を掴み


チャンユニヒョンとユトと出会い


ヒョジニヒョンとスンジュニヒョンと出会い


今度こそ、夢だった宇宙の全てを


みんなと一緒に解明できると思った。



なのに、それを簡単に無いものにしてしまう自分。

何もかも0にしてしまう自分。


ほんと俺、ダメなやつだ。



WYATT
WYATT
おい…泣くなって…。


ごめんね。


泣きたいのはジェヨンの方だよね。


ごめんね。


WYATT
WYATT
いっ、、
MK
MK
どうしたの…?
瓦礫の隙間から

血溜まりが、ジワジワと広がっていくのが見えた。


ジェヨンの足に、宇宙船の部品が食い込んでいる。


MK
MK
ジェヨナ!!

ジェヨンは笑っている。

WYATT
WYATT
悪い…俺の足、無理かも…。


……え?


無理って??どういうこと??



MK
MK
ジェヨナ…?
ジェヨンが、その筋肉質な腕で船体を持ち上げると、俺が抜け出せるくらいの僅かな隙間が生まれる。


WYATT
WYATT
出ろ!!


言われるがまま、俺は瓦礫の山から這い出る。

MK
MK
出れたよ!ジェヨンも、
WYATT
WYATT
いや、俺は無理だ!お前はヒョジニヒョンとスンジュニヒョンを探せ!
MK
MK
やだよ!一緒に行こうよ…。

俺が駄々をこねると、ジェヨンは言う。

WYATT
WYATT
俺多分、右足が切れてる。感覚が無い。

頭が真っ白になる。


MK
MK
ジェヨ、ナ、、
WYATT
WYATT
俺を庇って歩いてたら、お前まで消耗して、二人で力尽きる。お前だけで、二人を探せ。

俺に、ジェヨンを置いて行けって言うの??


MK
MK
俺!何かないか探してくる!!
WYATT
WYATT
バカ!お前だけでも地球に帰れ!!

今まで一度もジェヨンに叱られたことが無かったため、その圧にびっくりして、一瞬怯む。


が、俺は何としてもジェヨンと一緒に、みんなと合流しなきゃ。


MK
MK
いやだ!探す!!

俺は、行く当てもないはずなのに、走り出した。






少し進むと、上空から見えた、四角いピラミッドのような、レンガや泥で作られた不気味な建物に辿り着く。


何となく、その建物に足を踏み入れる。


誘われるように進むと、廊下が何股にも分かれていた。


そこを知り尽くしているかのように無意識に進むうちに、教会のような部屋を見つける。



そこに、人影があった。
MK
MK
あのー…!
脚がタコの人間
おや?こんにちは。
そいつは、人間の姿をしているものの、



脚だけがタコのような、人ではない何かだった。


そいつは、俺と同じ言葉を喋る。

脚がタコの人間
驚いているのかい?…君、相当焦っているね?
MK
MK
な、何?俺の考えていることがわかるの?

怪物は、くすくすと笑う。


脚がタコの人間
私にとっては、全てお見通しだよ。それに、今の君を見たら、誰だってそう思うさ…。
MK
MK
な…揶揄うなよ…。お前は火星人なの?


そいつは、より一層大きな声で笑う。


MK
MK
だから!笑うなって…!
脚がタコの人間
悪かった。君があまりにも面白いからさ。


そいつは、タコの脚をクネクネと動かして、こちらに近付いてくる。

その見た目も相まって、俺がビビりまくっていると、また笑いながら、俺の背後にまわる。


背後からいやらしく、長く鋭利な爪のついた細長い指を、肩に置いてくる。俺を怯えさすように。


そして、耳元で囁く。

脚がタコの人間
君、困ってるんだろう?私と契約をしないか?
MK
MK
契約…って何を…?

クスクスという笑い声が耳元で聞こえる。

脚がタコの人間
簡単だよ。君が叶えたいことを、君の寿命と引き換えに、私がかなえてあげるんだ。


なんだよ、それ。


MK
MK
なんだよ、怪しすぎるだろ…。
脚がタコの人間
じゃあ、君のお友達は助からないね。


またクスクスと笑い出す。


MK
MK
…契約って、どうすればいい?
脚がタコの人間
ふ、興味が湧いたかい?手始めに、君のお友達のところに連れてってあげよう。


そいつが指をパチンと鳴らすと、あっという間に宇宙船の瓦礫に到着する。

ジェヨンは、うつ伏せのまま、動かなくなっていた。

MK
MK
ジェヨン!!


近寄ってジェヨンを見ると、出血多量なせいか、顔色が良くない。

そして、もう動いていないのだ。

息があるのかもわからない。


MK
MK
ジェヨナ…
脚がタコの人間
無駄だよ。

ニヤニヤするそいつに苛立つ。

MK
MK
うるせぇ!
脚がタコの人間
私はルキ。君のために、何だってできるよ。


そいつが俺を見つめると、真っ黒な瞳に吸い込まれそうになる。


俺は、ルキ、という名のそいつに、ゆっくりと右腕を差し出す。



ルキは、俺の手を取り、長い爪の先で俺の指先を引っ掻く。


人差し指から、ぷくりと血が溢れ出る。


ルキは、俺の血に触れる。



その瞬間、その指先から血を伝って、全身を何かが這いずる感覚がして、息が苦しくなる。


MK
MK
うっ、、うっ、、、、

うまく呼吸ができない。

息を必死に吐いて、喉を詰まらせながら息を少しずつ吸う、それを繰り返す。


ルキ
君の全身を流れる血液のように、君と私は今、切り離せない関係にある。
ルキ
君が宇宙の真理を知りたいなら、私と君は、全てを共有しよう。お互いに秘密は無しだ。


ルキが俺の肩に触れると、呼吸が戻る。



そして、脈打つ鼓動が段々と速まる。






俺は、ルキと記憶を共有しているのか。







俺は、宇宙の全てを"見て"しまった。









俺たちが、水槽で魚を飼うのと同じ





俺たちが住む地球を





神々が上から見ている






その神々の中に、ルキの姿がある









俺は、あまりに大きすぎる宇宙とその真実に








頭が破裂しそうなほど痛くなり




今にもパンクしそうになった


MK
MK
はっ、、はっ、、、、
ルキ
ご主人、苦しいかい…?これが、私の見ている世界だよ。


ルキがもう一度俺に触れると、頭が急にスッキリして、軽くなる。



麻薬のようなものって、きっとこんな感覚なのであろう。



脳内が晴れ渡り、俺は、宇宙の真理を手にした。



俺はもう、普通じゃないのかもしれない。
MK
MK
ルキ、僕の寿命と引き換えに、ジェヨンの足を治して。ついでに、この瓦礫も退かしてくれ。


いやに、淡々とした声が出る。


こんなの、自分ではない。



ルキ
ご主人が仰せなら、なんなりと。クスクス。

ルキが手のひらを上にして、スッと腰から胸の位置にあげる。


瓦礫が浮き上がる。


そのまま払い除ける様に手を動かすと、瓦礫も一緒にガラガラと音を立てて、砂漠を転げた。



ジェヨンがゆっくり目を開ける。


WYATT
WYATT
ん…ミンギュナ…無事だったのか…。


ジェヨンには、ルキが見えていない様だった。


WYATT
WYATT
…お前、本当にミンギュンか?


何言ってるの?

俺は俺だよ?


MK
MK
何?俺は俺だよ。ミンギュンだよ。

ジェヨンが俺を怪訝に見つめる。

WYATT
WYATT
いや、違う…お前は誰だ…?


何を言ってるの?


MK
MK
…あっそ。なら、ここで一人で◯ねば??


え?


俺、何言ってるの??


否定しようにも、思うように口が動かない。



俺、ルキに支配されてる…?



WYATT
WYATT
ミンギュン…。
MK
MK
あーあ。せっかく助けてやったのに。
感謝したら?
WYATT
WYATT
お前、本当に誰だ?ミンギュンを返せよ。

ジェヨンが睨みつけてくる。


MK
MK
俺は俺だよ。何言ってるのさ。
WYATT
WYATT
んなはずねぇよ。
MK
MK
そう思う根拠はあるの?


根拠なんてもの…。


WYATT
WYATT
ん。


ジェヨンが差し出した物は、


俺が使っている、音声が保存できない


カメラ代わりのハンディタイプの映写機だった。



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