早朝から既にこき使われたサラは、もうヘトヘトになっていた。
時刻は裁判所襲撃実行時間の約1時間前。
サラは時計を見ながらふぅ…と一息ついて部屋のベットに腰掛けると、すぐに部屋の扉がドンドン叩かれた。
そう言うと、起こしに来てくれた人はバタバタと走っていった。
サラはふと、『明日の方がいい』という昨日のシューラの言葉を思い出した。
バタバタと支度を済ませてサラは部屋を出て王の部屋に向かった。
今回はノックをしないで勢いよく扉を全開に開いた。
ククッと笑った反面、王の目はしっかりとサラの目を睨みつけている。
サラは大きく息を吸って改めて王を見据えた。
王は飄々と笑って冷たい口調で続けた。
再び扉を勢いよく開けて部屋を出ようとして、サラはピタッと立ち止まった。
サラは王の方をくるっと振り返った。
西猫王は意味がわからないと言うようにポカンとした顔でサラを見た。
サラは肩をすくめて笑顔で王の部屋から飛び出した。
実行時間まであと10分。
裁判所前にはサラの予想を大幅に超える人々が集まっていた。
中には貴族と呼ばれる家系の猫もちらほら見られた。
サラがそう聞くと、シューラはニコニコ笑ってサラを見た。
サラはため息をついて裁判所の大時計を見た。
サラもシューラもそれ以上は何も言わず、周りの参加する者もサッと口を閉じた。
あと5秒で、10:00になる。
5…………
4………
3………
2…………
1……………!!
シューラの掛け声を合図に、
『おー!!』と声を荒らげて警備員を押し倒し、一気に裁判所へと流れ込んでいった。
不満を持った民が団結し、大きな波となって裁判所をあっという間に飲み込んでいく。
ものの1時間もしないうちに、裁判所襲撃は完了した。
窓は割れ、座席はめちゃくちゃになり、装飾はボロボロになったが、金品を盗む者はいなかった。
団結した国民に怖気付いたのか、国王はすぐに声明を発表した。
それは、
『今後一切、国政や権力、法に王は関与しないことを永久に誓う』
という、国民が1番納得する形のものだった。
こうして、西国大革命は幕を下ろした。
が、ここから革命が進んで行った、と言っても過言ではないだろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!