広い庭。
その真ん中に立派すぎる噴水がある。
この春から王子担当召使いになったサラは、城の最上階にある王子2匹の部屋の前からその噴水を見ていた。
今は2匹の幼なじみではなく、2匹専属の召使い。
以前の様に彼らに馴れ馴れしく話しかけることもなければ、食事を一緒にすることもなくなってしまった。
去年までも当たり前のようにこの部屋に通っていたのに、今年になって2匹は一気に遠い存在になってしまった。
部屋に入ると、シューラは綺麗なステンドグラスの前に立っていた。
猫にしては広すぎるほどのお部屋だ。
サラが尋ねるとシューラはケラケラ笑いだした。
サラはムッとした表情でシューラを見た。
ニヤニヤしながらシューラが近寄ってくる。
シューラは、はあ…と長いため息をついた。
サラは一礼して部屋を出た。
すぐ隣の扉をノックした。
「もう誰だよ」という気だるげな声が中から聞こえてきた。
ぶつぶつぼやきながらもハバルが部屋から出てきた。
扉をしっかり閉めてからシューラの部屋の方へ歩き始める。
一言二言、会話をするとシューラの部屋の前についた。
ハバルがノックをして部屋の中に入った。
その後ろからサラもついていく。
シューラはサラッと言ったが、その場にいた1人と1匹は顎が外れるほど口を開いた。
はっと声を出してサラは口を押さえた。
シューラはこくりと頷いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!