第3話

王子2匹担当:新人召使い
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2018/04/20 10:03
広い庭。
その真ん中に立派すぎる噴水がある。
この春から王子担当召使いになったサラは、城の最上階にある王子2匹の部屋の前からその噴水を見ていた。
サラ
小さい頃は2匹と一緒にあの周りで鬼ごっことかしたんだけどね…
今は2匹の幼なじみではなく、2匹専属の召使い。
以前の様に彼らに馴れ馴れしく話しかけることもなければ、食事を一緒にすることもなくなってしまった。

去年までも当たり前のようにこの部屋に通っていたのに、今年になって2匹は一気に遠い存在になってしまった。
シューラ
サラー?今そこにいるー?
サラ
はい、どうしましたー?
シューラ
服どっちがいいか選んで欲しいんだけどー
入ってきて?
サラ
…失礼します
部屋に入ると、シューラは綺麗なステンドグラスの前に立っていた。
猫にしては広すぎるほどのお部屋だ。
サラ
どのお洋服でしょう?
サラが尋ねるとシューラはケラケラ笑いだした。
サラ
な、なんですか…?
シューラ
もう無理!
耐えられない!
サラ
もう、なんですか!
シューラ
あはは…
それやめて!
サラはムッとした表情でシューラを見た。
サラ
シュー!なんでそんな笑ってるの?!
シューラ
僕らに敬語使ってるサラが面白すぎるんだよ!
サラ
はあ?!なにそれ!
わたし召使いなんだよ?
シューラ
それでも僕らにとっては昔から知ってるサラだからさー
サラ
もう…それで?
なんの服を選べばいい?
ニヤニヤしながらシューラが近寄ってくる。
シューラ
そんなの無いよ?
サラ
…へ?
シューラ
"昔から知ってるサラ"と話したくて言っただけ
サラ
なるほど
シューラ
その前にちょっとだけ召使いして。
明日の予定教えて?
サラ
明日のシューラ様のご予定は、西国からライ姫様が遊びに来ていますので、12時からライ姫様とご一緒に昼食。
場所は城内ですので、その時にご案内致します。
食事の終わる時間は未定ですが、15時から春の式典がありますので14時にはライ姫様とお別れしていると余裕があります。

先程申したように、15時から1時間ほど式典があります。
その後2時間ほどゆっくりして頂いて、19時からお祝いの舞踏会があります。
シューラ
舞踏会って僕も出なきゃいけないの?
サラ
もちろんです。
ライ姫様に失礼ですよ?
シューラ
え!ライ姫と踊るの?!
サラ
そうですよ
失礼のないように、と猫王様から念を押されていますので。
シューラは、はあ…と長いため息をついた。
シューラ
りょーかいでーす
シューラ
ねえ、ハバル呼んできてくれない?
サラ
かしこまりました
サラは一礼して部屋を出た。
すぐ隣の扉をノックした。

「もう誰だよ」という気だるげな声が中から聞こえてきた。
サラ
サラです。シューラ様がお呼びです
ハバル
もうなんでわざわざ…
ぶつぶつぼやきながらもハバルが部屋から出てきた。
扉をしっかり閉めてからシューラの部屋の方へ歩き始める。
ハバル
シューはなんか言ってた?
サラ
いいえ。
伝言は預かっておりませんが…
ハバル
そう。
一言二言、会話をするとシューラの部屋の前についた。
ハバルがノックをして部屋の中に入った。
その後ろからサラもついていく。
ハバル
シュー!明日は会食だろ?
あのー…どっかの姫と
サラ
西国のライ姫様ですよ
ハバル
あ、そうそう。
そんな名前だったか
シューラ
そう。
多分その時、僕の婚約が決まっちゃうと思うんだよね〜
シューラはサラッと言ったが、その場にいた1人と1匹は顎が外れるほど口を開いた。
サラ
婚約?!
ハバル
婚約?!
サラ
え、本当に婚約?!
ハバル
婚約って俺らが知ってる婚約?!
シューラ
そうだよ?
ふたりとも驚きすぎだよ?
サラは召使いじゃなくて幼なじみモードになってるし
はっと声を出してサラは口を押さえた。
サラ
いや、今だけは幼なじみモードでいさせてよ…
王様からなんか言われたの?
シューラ
「お前ももうすぐ国王になるぞ」って、ボソッと
サラ
なるほどねぇ…
ハバル
もしかしたら父さんが病気、とか…?
サラ
いやいや、毎日ご挨拶してるけどとっても元気だし、召使いの間でもそんな噂流れてないし
ハバル
と、すると…やっぱり婚約か
シューラ
僕はたぶん西国に婿入りして、そこの王になる…
サラ
え、じゃあ国を出ていくの?!
シューラはこくりと頷いた。

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