第9話

なんとかしたい、切実に。
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2018/05/10 09:26
シューラはサラをベットに座らせて、自分は近くの椅子にちょこんと座った。
シューラ
で?なにがあったの?
サラ
別に何も無いよ?
大袈裟だなぁ
サラが笑ってみせるとシューラは大きなため息をついた。
シューラ
分かるから。
サラが無理して笑ってるの。
お願いだからちゃんと話して
サラ
いや…大丈夫だから
そう言うと、シューラは椅子からジャンプしてベットに移った。
そしてサラの右腕に顔を寄せる。
シューラ
こないだ怪我してたでしょ?
どうなったか見せてよ
サラ
そんなにひどい怪我じゃなかったけど…
サラはしぶしぶ腕を見せた。
まだかさぶたが三本線になって残っている。
シューラ
この傷、結構深かったでしょ
サラ
まあ、深かったかな
シューラ
誰にやられたの?
サラ
誰って…別に
シューラ
この傷だと人間じゃないよね?
サラ
………
シューラ
猫だよね?
サラは黙ってそっぽを向いた。
シューラ
ライ姫かな?
シューラはサラの周りをゆっくり歩き始めた。
シューラ
お后様かな?
シューラ
それとも…
そして、サラの真後ろで立ち止まる。
シューラ
王様かな?
サラ
……
黙ったままのサラだったが、シューラは満足そうに笑った。
シューラ
そっか…王様かー
サラ
え?なんで分かったの?
シューラ
王様?って聞いた時に、
「そうです」って顔に書いてあったよ
サラ
え?!
驚いたサラが両手で顔をぺたぺた触ると、シューラはニャッと小さく笑った。
シューラ
で、何があってこうなったの?
もうバレてしまった以上、サラはこれまで受けたことを全て話すことにした。






すべて話終わる頃には、サラの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

怖い事を思い出して泣いているのか、
シューラに話せたことに安心して泣いているのか…

なぜ泣いているのかはサラにも分からない。
シューラ
あの王様がそんなことを…
全然気づかなかった…
シューラは気を使っているのか、ずっと窓の外を見ている。
シューラ
少なくとも僕らの前では"いい王様"って感じなんだけどなぁ
サラが落ち着いたのを見計らって、シューラはサラの隣に座った。
シューラ
さあ、これからどうする?
サラ
どうするって…なんかするの?
シューラ
え?
まさか、このままやられっぱなしでいいの?
サラ
良くないけど…だけど
シューラ
だけど?
サラ
私みたいな1召使いが何かしたところで、私だけが追い出されて『はい、おしまい』になるに決まってるよ…
シューラ
もし、この国の次期国王が協力するって言ったら?
サラ
そんなうまい話あるわけないじゃん
シューラはサラの顔を見ながらニヤニヤしている。
サラ
え、なになに
シューラ
気づかないの?
シューラはそのまま目を大きく開いて更に顔を近づけてくる。
シューラ
ほらほら、よく見て!
まだ気づかない?
サラ
ん?
シューラ
……………
サラ
…………
シューラ
次期国王……
サラ
それが?………え、次期国王って!
サラが指差すと、シューラは嬉しそうに何度も頷いた。
シューラ
次期国王は、サラに協力するよ?
さあ、どうします?
サラ
どうするって…
こういう時ってどうするべき?
シューラ
うーん、じゃあ…この国から追い出しちゃう?
サラ
いくらシューでもさすがに出来ないんじゃない?
うーんと5秒ほど唸ると、シューラがぱっと顔を上げた。
シューラ
父さんに伝えれば何とかならないかな?
サラ
王様に?!
西猫王にバレずにこの国を出ることなんてできないでしょ?
シューラ
………
サラ
……やっぱり何にもできないでしょ
シューラ
いや、父さんに伝えられないなら僕らだけで何とかすればいいんだよ
サラ
何とかするって…
「例えば…」と呟いてシューラは目を瞑った。
シューラ
この城の召使い、ほぼ全員王様のことをよく思っていないとしたら
サラ
城内だけじゃなくて、政治家とか警察とか、王様に権力を握られていることを不満に思っているとしたら
シューラ
一般国民も、王様が思いのままに動かす独裁国家に反発しているとしたら
シューラはぱっと目を開き、サラと顔を見合わせた。
シューラ
上手く行けば、国家をひっくり返す大革命を起こせるぞ
サラ
召使いはみんなよく思っていないはず。
みんな、王様が召使いを奴隷みたいに扱っていることも、担当召使いに暴力振るっていることも知ってるし。
シューラ
じゃああとは政治家とか、国民とかか…
サラ
どうやって調べるの?
シューラ
明日城下に出るから、その時に適当に聞いてみるよ
サラはキッチンから自分とシューラ用の飲み物を運んできた。
サラ
革命かぁ…うまく行くかな
シューラ
まあ、やってみなきゃ分かんないでしょ。
サラはシューラの皿にグラスを近づけて、静かに乾杯をした。

革命を成功させたい、と願いながら1人と1匹はそれぞれ飲み干した。

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