---あなたside---
4月。春。
新学期早々寝坊した瓏を迎えに行ってから私たちは学校への電車に乗った。
ガタン…ゴトン…
わいわいしゃべっている6人の会話には入らず、窓の外を見つめる。
田舎なここは電車に乗る人が少ない。
でも、私はそれがいい。
満員電車とかたえられん。
たえられんのに…
私は行き先表示を見る。
『東京行き』
そう。今私たちは東京の学校に通っている。
理由は簡単。
通える高校が無いから。
田舎過ぎてもうそろ廃校の学校しかない。
「母校が廃校なんて嫌でしょ?」
と、お母さんがいらぬ優しさを発揮して東京の学校に通うことになった。
瓏と一緒にすな。
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途中の駅でさあやと合流する。
私と慧哉達は同じ駅からだけど、さあやは違うんだよね。
2つ先の駅の近くに家があるらしい。
行ったことないから知らないけど。
瓏と一緒やん。
さあやは慧哉を狙ってるらしい。
必死にアピールしているさあやを見ていると笑ってしまう。
やべ
なんとかごまかせたわ。
さあや、所々めんどいからなぁ。
『次は渋谷ー渋谷ー』
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!