凛
「なぁ、宗介」
部屋に戻って来た宗介に声をかけた。
宗介
「どうした?」
凛
「その... あなたの夜の練習... これからは俺が見ても良いか...?」
宗介
「知っていたのか?」
凛
「まぁ、ランニングに出たらお前らを見てな... 通りであなたは早く上達するし、お前は同じ時間帯に部屋にいない訳だ」
宗介
「俺は別に構わない。あなたも大丈夫だろ」
凛
「え...」
予想と違ってすんなりOKが出たから俺は少し驚いた。
宗介も楽しんでいるから止めたくないのかと...
宗介
「あなたとの時間が増えるから好都合じゃないか。それに...」
彼はニヤッと笑った。
宗介
「夜のプールで女と男が2人きり...」
なっ...!顔が熱くなるのが分かった。
凛
「や、止めろ!バカヤロー...」
あなたside
夜。時間になっても宗介が来ないから心配になった。
用事がある、とか言わなかったけど... まぁ、たまには1人でも大丈夫か!
そう考えて、アップを取った後泳ぎ始めた。
しばらく経って、水の中にいたままプールサイドで休んでいたら物音が聞こえた。
あなた
「そうす... って凛!?え、何で!?」
水泳パンツ姿の凛が現れた。
凛
「そんなに驚くなよ。俺が悪者みたいになっちまうだろ」
あなた
「そういうつもりじゃないけど... 何で凛がここにいるの?」
凛には何も話していないし、宗介が口止めの約束を破るとは考えられない。
凛
「まぁ... 俺、お前が宗介と練習しているのを見てさ... 替わってもらったんだ。嫌なら止めるけど」
あなた
「いやいや、全然大丈夫だよ!むしろ嬉しい!」
宗介の指導も良いけど、やっぱり凛の方が... ね... ^^
凛
「なら良し!改めてよろしくな!」
こうして凛に1日に2回も練習に付き合ってもらう事になった。
数日後。
凛
「あなた!今日は最後に端から端まで1回泳いでみろ!」
あなた
「え... そんな...」
さっきまで半分の距離を泳いでいて、大変だったのに...
凛
「途中で足を着いても構わねぇよ。でももちろん、なるべく避けてな」
あなた
「でも...」
凛
「お前なら出来るから大丈夫。俺が隣にいてやるから」
彼の声や言葉はしっかりしていた。
水泳部部長でもある凛が言うんだから... 信じよう!
あなた
「頑張る...!」
凛
「行くぞ!」
どうにか1回も止まらずにプールの反対側にたどり着いた。
あなた
「はぁ... はぁ... 凛、出来たよ!」
ゴーグルを外して隣を向いたけど彼の姿はなかった。
あなた
「凛...?」
隣にいてやる、て言ったじゃん...
あなた
「凛...?うわっ!」
自分のすぐ近くで水しぶきが上がって凛が現れた。
あなた
「凛!ビックリし...!ん...」
身体に腕が回ってキスをされた。
凛side
途中で足を着いても良い、て言ったのにあなたは最初から最後まで泳ぎ切った。
何か嬉しかったんだよな。泳げなかったあなたがこんなに成長して...
だからご褒美の意味も兼ねて... キス... したんだ...
凛
「お前が好きだ... お前とずっと一緒にいたい...」
顔を離して自分の気持ちを伝えた。
凛
「あなたは... どうなんだ...?」
期待しない方が万が一のために良いのは分かっている... だけど... 好きだからこそ期待しちまうんだよな...
どうか答えが...
あなた
「私も同じだよ、凛...」
凛
「っ...!」
あなた
「好きだからずっと一緒にいたい...」
凛
「あなた...!」
スゴくて彼女を抱き寄せた。
クソッ... 泣きそう...
あなた
「帰ろうか。もう遅いし、最後の課題もやったし」
凛
「おう...」
寮に帰る時、俺達は初めて手を繋いだ。
何か... 俺までご褒美をもらった、ていう感じだな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。