第32話

🍎予兆
1,393
2021/04/26 11:00
今日は朝からじめじめとした嫌な天気で、私が家を出る頃にはまるで何かを予兆しているような荒れ模様だった。
初めて嘘をついたあの日から、私はやっぱりジミンに真っ直ぐ向き合いたくて今まで通り接することを選んだ。


彼の仕事場に行けばみんなに囲まれて楽しい時間を過ごす。

Vさんは相変わらず私を翻弄するような視線を送ってきたり、最近は何か話したそうにタイミングを伺っている。
それに気が付いている私は可能な限り二人きりにならないよう努力していた。

彼は以前に比べて前よりも積極的に輪の中に入ってきて、みんなの前でも少しずつ会話するようになった。

だけどそれだけ。
1メンバーと、1メンバーの彼女。
私たちはそれ以上でも以下でもない、そういう関係。
別に、これが普通のこと。


何も考えることはないはずなのに、何か喉の奥に引っかかっているような気がする。
あの日から、声にならない声がずっと苦しそうにくぐもっていた。
you
わ、酷くなってきたな
雨がだんだんと強くなってきて、風もあるから傘がさせない。

急いで事務所に向かって走る。
カバンからタオルを出して頭と肩を少し拭いた。
エレベーターに乗りこみ目的の階につくと、何故かフロアが少しだけバタバタしていた。

一応スマホを確認するけどジミンからの連絡は特にない。

練習室を覗くと珍しくメンバー以外のスタッフさんがいなかった。

一応コンコンとノックすると全員がこちらを振り向く。
Jm
あなた、
Jn
あなたちゃん…
少し気まずそうな顔をした彼らに緊張した。

この空気、なんだろう…?
Nm
少しトラブルがあったみたいでPDに呼ばれてるんだ
少し聞くと、トラブルの内容はまだ明かされてないらしいけどこの後すぐ部屋を出るという。

メンバーが一人ずつ部屋を出る中、Vさんだけは私の方を見なかった。

それがとてつもなく嫌な予感がして心臓が痛い。
Jm
あなた、ごめんねせっかく来てもらったのに…
you
ううん、私どうしたらいい?今日は帰ろうか?
Jm
んー…話が何かわからないけど別に隠すこともないし…。
あなたが良ければここで待ってて。
わかったと静かに頷くとジミンが少し心配そうな顔をした。
元気付けるように彼の腕をさすると、微笑みながら私の頭を優しく撫でる。

ぞろぞろと部屋を出ていくみんなを見送った。

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