Vさんの厚い身体に抱かれながら、玄関先で暫しの沈黙が流れた。

きっと今、私たちは同じことを思ってる。

次いつ会えるんだろう、
次はいつこんな風に抱きしめられるんだろう、って。


だけど敢えてそのことは口にしないで私たちはお互いの距離を再び作った。

身体が離れるとすぐに温もりも飛んでいく。

小さく手を振って別れると、パタンと閉まった扉がすごく切なかった。


自然と動く足が扉の前まで私の身体を運んでいく。

既に彼の香りが消えつつある玄関に取り残された私は、何とも言い難い寂しさに襲われた。

冷たく閉まっている扉にぴったりと手を合わせるけど、そこからは何も感じない。

今すぐここを開ければ廊下の端にまだ彼を見つけることができるかもしれないけど、私はそうしないことを選んだ。


暫くその場を動けないでいると、彼が居なくなった虚無感と共に胸の奥からジミンに対する罪悪感がじわじわと湧き上がってきた。

なんて事したんだろう…
今更引き返せない、なかったことにはできない。
でも今の私に、真実を伝える勇気はあるだろうか。

ジミンの顔を思い浮かべると常に頭に描かれるのは彼の優しい笑顔。
とても決断できなくて、自然と深く息を吐いた。

その優柔不断な思考が引き起こしたかのように突然身体に震えがくる。
寒気を感じて両手を組みながら二の腕をさすった時、部屋の中にインターホンの音が響いた。

急いで玄関からリビングに向かう。


モニターを確認すると写っていたのはーー

急いで通話ボタンを押すとサングラス姿の彼がチラッとカメラを見た。

心臓がドキドキして手に汗をかき始める。

動かない彼を見てハッと我にかえった私は、慌ててオートロックを解除した。


私の部屋は7階。
エレベーターホールまでは少し距離があるつくり。
その移動と待ち時間と………


私は急いで寝室とお風呂場を周り何か痕跡がないか注視した。
その後鏡の前に立って自分の容姿を確認する。


心臓がどくどくと大きな音を立てる。

私、どれくらい玄関にいた？

Vさんはもう帰っただろうか。

やけにジミンが上がってくるまで時間がかかっている気がする。

まさかVさんと鉢合わせてたら…、、

急いで洗面所から寝室に戻り、置きっぱなしのスマホを確認した。

ジミンからは複数の着信とメッセージ。

📞

📞

朝起きてから今まで放置していたことを後悔した。
もっと早く気付いていれば……、、

スマホをスクロールする手が震えていることに気付いた時、やっと玄関からガチャガチャと音が聞こえてくる。


すぐにその音がする方へと走っていくと、ちょうど合鍵で中に入ってくるジミンと目が合った。