「 起きて!あなた 」
「 んん、 」
「 遅刻するよ? 入学式の日に遅刻なんてみっともないで ! 」
「 分かっとるって 、 」
「 最初失敗したら後悔すんで ? 」
少し真面目な顔をしたお母さんがうちを見つめながら言う 。
最近お母さんはこの言葉をよく使う
" 後悔した時にはもう遅いんやで ? " とか " 後悔する位ならやめとき " とか 。
お母さんはきっと意味があって言うてるんやと思うけど 、このときのうちはその言葉を軽く捉えていた 。
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姿見を見ながら着慣れない制服をしっかり整え 真っ黒の胸ら辺まである髪をポニーテールにすると軽く朝ご飯を食べ 玄関からリビングにいるお母さんに聞こえるように大きな声で言った
「 行ってきます ! 」
お母さんはひょこりと顔を出すと
「 行ってらっしゃい 気を付けてな 」
と微笑んで言う 。
短かいスカートを揺らしながら桜道を歩き 見上げればおめでとうと言うように沢山の花弁がゆらりゆらりと落ちてくる 。
今日で高校生なんや と実感のない言葉を軽く呟くと 高校の門の前で止まった
普通、高校の入学式なら親も一緒に行くんやろうけど 、うちの高校は生徒だけなんやって 〜
まぁ、うちとしたら嬉しいけどな
そんな事を思いながら おめでとう を繰り返す校長先生の話を聞いていた 。
' うちはこの高校で青春します '
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。