第11話

君のために。(高橋)
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2021/07/16 13:24
あなたside
バレンタインから1週間たとうとしていた。
恭平とはまだ何も話せていない。
お互いなんだか気まずかった。
いつも通りの学校生活を送り、昼休みとなった。
恭平はほかの男子と楽しそうに話している。
前まではあの笑顔も私の元へ向けられていたのになぁ、
仕方ない。私がこの仲を壊そうとしたんだもん。
私は欲張りだ。
なんて思いながら、少し泣きそうになった。
すると、大橋先輩が私に声をかけてきた。
大橋「あ、あなたやん!一緒に弁当食べへんー?」
『あ、大橋先輩、』
大橋「え、ちょ、何泣いてん?悲しいことあったんか?」
と言って心配そうに私を見ている先輩に申し訳なくなった。
『私、恭平に振られた。』
と言うと先輩はすごい驚いていた。
大橋「えっ、それちゃんと告白したん?」
『しようとしたんですけど、告白遮られちゃって、』
なんて、自分で言っていてまた泣きそうになる。
大橋「そうなんかぁ、辛かったなぁ。」
なんて言って涙を指で優しく拭ってくれた。
大橋「あなたえらいやん!頑張ったなぁ!」
と、頭を撫でてくれた。
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先輩と最近仲良かったのは恋愛相談に乗ってもらっていたからだ。
いっつもニコニコしているのに真剣に話を聞いてくれて、私も話しやすかった。
先輩に頭を撫でられていると、後ろから誰かに引っ張られて
その誰かの腕の中へスポッと収まった。
『えっ、』
と、顔を見上げると恭平だった。
高橋「ごめん、やっぱ俺あなたがおらんと無理やわ。」
何を言ってるかわからなかった。
先輩は気を使ってほかの友達の所へ行っていた。
『えっと、どうしたん?』
高橋「俺、気づいた。お前のこと好きやって、」
『え、でも、この前告白遮ってきたやん、からかっとんならやめてや』
高橋「え、告白?大橋先輩が好きっていう恋愛相談やなくて?」
『え、?』
高橋「だからー!あなたが大橋先輩が好きって言うんやないかって、」
『え、いや、私は恭平に告白しようとしてたんやけど…』
高橋「えっ、?」
どうやら、2人とも勘違いしていたらしい。
その勘違いがバカバカしくて、2人顔を見合わせて笑った。
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『なんでそんな勘違いしてたんやろ笑』
高橋「ほんまにそれ笑」
なんて言いながら笑っていたら、恭平が少し真剣な顔になって私を見つめた。
『ん、なに?笑』
と言うと、恭平は少し顔を赤らめて
高橋「さっきも言ったけど、俺、あなたがおらんとあかん、やからさ、」
と言ってごにょごにょしていた。
その続きの言葉を遮って、私は言った。
『恭平、私と付き合って!』
と言うと、恭平は目を見開いてニコニコの笑顔で、でも、すこし悔しそうな顔をして
高橋「当たり前やろ!」
と言って私の頭をクシャッと撫でた。
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1年後のバレンタイン。
少し早起きをして、1年前よりは上手くなったメイクをして、
1年前と同じように『よしっ』と呟いてチョコレートを片手に家を出た。
今回は失敗も怪我もしていない。
待ち合わせ場所に行くと、恭平はまだいなかった。
前髪も化粧も崩れないように気にしながらソワソワして君を待つ。
可愛いって思って貰えるように。
美味しいって言って貰えるように。
自慢の彼女になれるように。
全ては君のために。

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