____夢を見た
船の上、シャンクスが私に向かって微笑んでいる
大きな手が頭に乗せられていて
ぽんぽんと優しいリズムで撫でられて
船員達も周りで微笑んでこちらを見ている
____みんなわらってる
___幸せな夢
私も嬉しくなって目をゆっくりと閉じて
温かみを堪能して
これが、続きますように、と願った矢先
場面が変わった
私は床を見つめていて
掃除中なんだということがわかった
__遠くから、声がして
シャンクスの優しい声
それに
__悪魔の声
あ、と思った
もうシャンクスは悪魔に毒された後だ
もう、手遅れ
船員達も。
さっきまで私だけを見つめてくれていたその視線は
可愛らしいなりをした
わがままプリンセスに注がれていた
___みーんな、悪魔にやられてしまった
……いつもなら不満を感じていた気がする
けど、もう、むりだから
悪魔には、勝てないから
最初の夢にはもう戻れない
……あ、そっか、
最初からあの幸せな時間は夢だったんだ
もともと、こうなる運命だったんだ
きっと、私が悪魔の幸せを邪魔していたんだね
だんだんと、視界がぼやけて
でも、泣いている訳では無かった
暗くなっていく
景色も、床も、
完全に黒に飲み込まれてしまった時
_____何も感じなくなっていた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!