「炭治郎くん!」
「あぁ、あなたか。」
「これから任務?」
あぁ、そうなんだ。とにこやかに返す炭治郎くん。
頑張って、無理しないでね。と伝えればありがとう、と笑って返してくれる。
あれから私は炭治郎くんに付きっきりだった。
まだ花吐き病について詳しく知らない私は、炭治郎くんがいつ、どこで花吐き病が発症するか分からないのでぴったりと炭治郎くんのそばにいた。
「……」
じ、と視線がする方を見ればこちらを無表情で凝視している善逸くんがいた。
目が合うとハッとして逸らされてしまう。
「……」
やっぱりあの時の事、怒ってるのかな。
怒ってるよね。八つ当たりしてしまったんだから。
あの日、善逸くんに八つ当たりしてしまった日から更に言葉を交わす機会がなくなった。
第一に、お互いの任務が忙しいから。
第二に、単純に気まずくて私が避けてしまっているから。
そんな日々が続いたせいで、とうとう善逸くんからも避けられるようになってしまった。
自分のせいとはいえ、心がモヤモヤしてしまう。
「…あなたも今日は任務なんだろう?」
ハッとして顔をあげれば、炭治郎くんが優しい瞳で私を見ていた。
「そう、だよ。…お互い頑張ろうね。行ってらっしゃい」
「あぁ、行ってきます。」
なんだか新婚さんみたいだな、と冗談めかしく言いながら、炭治郎くんはいつもの3人と肩を並べて任務に向かって行った。
その背中を眺める。
どうしても、無意識に黄色の方に目がいってしまう事は気付きたくなかったな。
*
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。