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「花吐き病になっちゃったの。」
初めて誰かに言った。
炭治郎くんは「花吐き病…?」と首を傾げている。
あまり知られていない病気らしい。
「 嘔吐中枢花被性疾患…通称花吐き病って言うんだけど、…恋心を拗らせるとなっちゃう病気なんだって」
そう言って先程観察していた小さな花を炭治郎くんの手に乗せる。
白い小指サイズの小さな花。
「これは…ギンモクセイ?」
これ、ギンモクセイって言うんだ。
名前、初めて知ったかも。
「ギンモクセイは秋の花なのに…今は春だぞ?」
「それは私がその花を吐いたから。」
炭治郎くんは驚いた顔をする。
「人が、花を、吐く…のか?」
「うん。信じられないかもしれないけど、花吐き病ってそういう病気なんだ。」
そんな病気あったんだな、とギンモクセイを見つめる炭治郎くん。
「で、その…恋心を拗らせるっていうのが…」
炭治郎くんが触れないので、私から言い出す。
「あぁ、言いたくなかったら言わなくてもいいぞ。その手の話は繊細なんだって昔、禰豆子からたくさん聞いてるから。」
にこ、とお日様のように笑う炭治郎くん。
本当に優しい子だな。
じんわりと涙が出てきてしまう。
「ありがとう、炭治郎くん」
じゃあ仕切り直してお団子楽しもうか、
そう笑う炭治郎くんに頷く。
炭治郎くんと話すと気分が晴れるな。
そう涙を拭き取り、団子を口にしようとする。
「何してんの2人で」
座っている私たちの頭上から、不満を含ませたような声が降りかかる。
パッと上を向いて驚く。
「ぜ、善逸…くん?」
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3/9 訂正しました。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。