第15話

底が見えた紅箱
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2020/03/14 18:43




あれから数日経ったが、宇髄さんのお嫁さんから報告が来ることは1度もなかった。

「今日の出先は『京極屋きょうごくや』だ。」

日が空のてっぺんに登る少し前の時間。
藤の花の家で芸者の準備をしている時、宇髄さんが私に告げた。

「京極屋、ですか。」

確かそこは雛鶴さんが潜入していた場所だ。
もしかしたら鬼に関する手掛かりが何か掴めるかも知れない。気を引き締めていかなければ。

巾着袋から可愛らしい紅が入った包みを取り出す。
…以前、善逸くんから貰ったものだ。
きゅ、と1度祈るように抱きしめてから蓋を開け、薬指に少量取る。

''この色、あなたに似合うと思って!''

鏡には薔薇色に色付いた口があった。
紅箱を見ると、もう底が見えていた。

またひとつ、花を吐く。


「おいあなた、そろそろだぞ」

宇髄さんに呼ばれてハッとする。
これから任務なんだ。心を入れ替えろ。
この紅はしおらしくなるためにつけたんじゃない。

「はい、只今。」

三味線が入った長箱を持ち、花街に身を繰り出す。


*

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