第3話

暖かい手
1,810
2020/03/14 18:41
それからは大変だった。


「しのぶさん…はぁ美しい…」

「女の子に触ってもらえるの?!」

善逸くんは余すことなく近くの女性に蕩けるような視線を送り、甘い洋菓子のような声色で話しかける。

私以外の女の子に。

なんで私は違うんだろう。
なんで私には言ってくれないんだろう。
魅力がないのかな。

そう考える度に小さな花を吐く。



「そういえば、この花…なんて言うんだっけ」

任務帰りの団子屋さんで独りごちる。

匂いを嗅いだことある気がするような花。
先程私が吐いたその花をつまみながら観察する。


「あ、あなたじゃないか。偶然だな」

「炭治郎くん。…ほんと、偶然だ」

「任務帰りか?」

「うん。炭治郎くんは?」

「俺は…俺もお団子が食べたくなって来たんだ」

少しどもった炭治郎くん。
これは半分嘘をついているな、と思う。

「いや、最近段々とあなたの元気がなくなっていってる気がして…心配してたんだ」

彼は私の匂いを嗅ぎとったのだろうか。
…きっと花吐き病のこともすぐバレてしまうだろうな。

炭治郎くんは団子を1つ頼んだ後、私の方を向いた。
赫灼って言うんだっけ。綺麗な目と目が合う。

「何かあったら、俺や善逸を頼ってくれ。
君は昔から1人で抱え込んでずっと悩むんだ。」

俺たちはあなたが大切なんだ。と私の手を握る。

暖かい手。
これが善逸くんの手だったらもっと良かったのに、と最低な事を考えてしまう。

「…ありがとう炭治郎くん。…実はね、私」


炭治郎くんになら言っていい、と思った。



「私、花吐き病になっちゃったの。」

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