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「ぜ、善逸…くん?」
「何してんのって。」
花吐き病にかかって初めて交わした言葉は、不機嫌な色に染まっていた。
というか質問の意図がわからない。
団子を炭治郎くんと2人で食べているだけなのに、何故こんなに不機嫌そうなの?
「あぁ、善逸。見ての通り、2人でお団子を食べていたんだ。善逸も食べるか?」
そんな私の考えを意図して無視したのか、はたまた何も考えずそう発言したのか、炭治郎くんが底抜けの笑顔で善逸くんにそう話す。
「そうじゃなくて」
「あなた、なんで泣いてたの」
ぴし、と空気が固まるような感覚。
「な、泣いてないよ」
「嘘。泣いてる音がしてた」
それに目が赤い。
なんでそう目ざといの。
「あ…これは、炭治郎くんに話を聞いてもらって、それで自然と…」
「ごめん炭治郎、ちょっとあなた借りてくね。」
え。
私が話している途中なのにも関わらず、善逸くんは私の手を引いて足速に団子屋を離れる。
どうして。
どうしてそういう事をするの。
握られた腕を見ながら脳内で呟く。
これじゃあまた私の恋心は拗れてしまう。
諦めようとする度にこうして善逸くんは私の心を鷲掴みにして離さない。
なんて残酷な人なんだろう。
私の目には、また涙が溢れだしていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。