第19話

起きて。
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2020/03/14 18:43




気が付けば、私は綺麗な花畑の中にいた。

三味線を持つ手は今よりふっくらしていて小さい。

「なに…これ?」

「あ!あなたちゃん!」

花をかき分けて私に手を振ってくる見知らぬ男の子。
いや、知ってる。つい最近思い出した、記憶の中にいた名前も知らない男の子。
男の子が振る手には、三味線が握られていた。

「先に着いてたんだ。ごめんね、待たせちゃって。」

「う、ううん!私もさっき来たとこだし」

勝手に口が開く。
何なのだろう。これは…夢?

「今日もお手本聴かせてよ!あなたちゃんの三味線の音は、すごく優しい音がするんだ」

ウットリ顔でそう言う男の子。
…なんだろう、聞いた事ある。見たことある、この場面。

胸がザワザワする。

「いいよ。ていうか__くん、私の三味線聴きたいだけじゃないの?」

「えへへ、バレた?」

私の声なのに、男の子の名前を呼んだであろうその声は、砂嵐のような音にかき消されてしまって聞き取れない。

また、勝手に身体が動く。

色とりどりの綺麗な花に囲まれて、私は三味線を弾く。月の明かりが私と男の子を照らしてくれる。

弾き終わると、控えめにパチパチ、と拍手をしながらキラキラとした目で此方を見る男の子。
やっぱりこの琥珀色の目には既視感があった。

「あなたちゃんの音、やっぱり好きだな。心地よくてずっと一緒にいたくなる。」

ふわ、と手を握られる。

「でも、でもね、」


そろそろ起きて。


微かに震える声。
ぶわ、と全身から汗が出る。


そうだ。男の子は、君の名前は___

*

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