第16話

追伸(サナ&ダヒョン)
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2024/04/10 06:21
追伸
(実は今も大好きです)


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サナSide


卒業してちょうど5年目の冬。


10代だった若い頃の私たちは制服を奪われ社会に押し出された。


『第56期卒業生 同窓会のお知らせ』


行きたくなかった。


正確にいうとあの子に会いたくなかった。


ありきたりな招待状は全くありきたりじゃない青春の扉をこじ開ける。


卒業式から止まった時間。


あの日から閉じ込めた思い。


行くわけないやん。馬鹿なん?


そう心の中で文句を言いながら押したボタンは『参加』の文字だった。


参加か不参加か選ばせるなんて卑怯だ。


自分で断ち切れないからお盆も正月も一度も帰ってきたことがなかったのに。





海と山と船しかない街。


どこに行っても爽やかな塩の香りと波の音しかしないそんな街だった。


二両しかない電車も1日に三本しか走らないし、悪い噂なんて瞬く間に広まるそんなこの街が窮屈で嫌いだった。
キム・ダヒョン
キム・ダヒョン
サナオンニ、久しぶりですね
この笑顔以外は
湊崎紗夏
湊崎紗夏
卒業ぶりやから5年ぶりかぁ。なんかちょっと綺麗になったな
キム・ダヒョン
キム・ダヒョン
ちょっと??
その瞬間。


微妙な笑顔で笑いかけてきた旧友の顔があの時のように戻った時。


カチリと音が鳴ったんじゃないかと思うほど5年分の時間が一気に戻る。


黒色だった綺麗な髪は金髪に染められているところとか、


授業中に爆睡して寝跡すらついていた頬には丁寧なメイクが施してある所とか。


おしゃれに興味がなくてジャージばっかりだったくせに知らない間に着こなしたワンピースだとか。


嫌というほど感じる5年の重み。空白の時間。


なのにずるいくらいに変わってない仕草や笑顔。


お調子者の女子高生はすっかり大人で、綺麗な女性になっていた。


それでも微笑んだ顔は泣きたくなるくらい変わらない、私が知っているダヒョンだった。


だから馬鹿みたいに思い知らされる。
湊崎紗夏
湊崎紗夏
いや、嘘、だいぶ
同級生のくせに『尊敬してますから』なんて言って敬語を使ってくるところとか、


数ヶ月しか変わらない誕生日でも、


オンニ呼びなところとか耳に馴染みすぎて心地よさが逆に不快だ。
キム・ダヒョン
キム・ダヒョン
来てくれないかと思いました
湊崎紗夏
湊崎紗夏
なんで?
キム・ダヒョン
キム・ダヒョン
だって
“て”の形のまま口を数秒キープした後、また微妙な顔をして、幹事らしいことを言って去っていった。
キム・ダヒョン
キム・ダヒョン
まぁ今日は楽しんでいってください

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