千愛side
快晴の青い空。
校庭には2色の色、白と赤。
そして校長先生の
馬鹿長い話。
つむの小さな声にそう返す。
校長先生の話が長いのは全国共通のことだろう。
まぁ極偶に、長くても面白い話や、短い話をする校長先生もいるんだろうが。
残念ながら、青松院学園の校長先生はそうでは無いみたいだ。
校長先生の長い話が終わり、「やっと…!」とつむの目が輝くが、教頭先生の一言で、また瞳にハイライトが無くなる。
見てて面白いくらいの表情の変わり具合だ。
アズサside
体育祭実行委員会から手渡されたハチマキは赤色、つまり私は赤組だ。
青松院学園の体育祭では、何組かは事前に決まっているが生徒には発表されず、当日に渡されたハチマキの色で何組かが漸く分かる。
周りを見渡してみると、赤組ゾーンにいるのは、
華暦月に立夏くん、牌塚月に甘魅月。
…甘魅月、牌塚月と同じ組になれたんだ。
一方白組ゾーンには、
玻翠月、瞬呉月…ここだけで運動神経のバケモノ。
他には千夏ちゃんと雲隠月の姿も見える。
赤組のゾーンにも、白組のゾーンにも、会長の姿は何処にも見当たらない。
あの人、何処行って…
会長が見えなかったのは後ろにいたから。
…変な声出しちゃったじゃない!!!!会長のせいで!!!!!
会長が持っていたのは赤色のハチマキ……
一緒…………!!
これで心置き無く応援できる。
白組だと、敵を応援するなんて周りに悪いし、気まずくなってしまうから…
歩きながら、会長の横顔を横目で盗み見る。
会長ってナルシストで変な人だけど、守ってくれたりするうな優しいところもあって、……嫌いになりきれないし、寧ろ好き。
もし借り物競争であのお題が来てくれたら私は…
か、壁ドンとか、キ、キスとか…?!?!?!
きっと少女漫画だったら、
題名は「恋する乙女ちゃん❤︎」に違いないわ…!!!!
(※アズサは恋愛少女漫画を書いてるせいか、
妄想癖と漫画の題名を考える癖があります)
その後のことを想像して…振り切るかのように頭を振る。
いやまだ付き合ってもないし?成功するとも限らないし?
なんでこんな妄想してんの馬鹿〜!!!
会長の後ろにはぼんやりと…多くの人だかりが見える。
…ア、アナウンスの事忘れてた…!
リレー真っ最中の今、白組が優先。
目の前では風を切るかのように、瞬呉月が物凄いスピードで赤組と差をつけていく。
会長が笑った瞬間、横から急にすごい量の砂煙と風がやって来た。
砂煙の間に見えたのは、白組に圧倒的なスピードで追いついた牌塚月…白組の人もびっくりしている。
会長は私が聞くと、更に詳しく教えてくれた。
月の中で異能力が1番強いのは華暦月。
やはり、“才能の月”と言われるだけあるらしい。
莫大な霊力量に、5種類の多様な式神達、更に人間の形に近い神が3人に、何かもよく分からない猫の霊……
情報戦で強いのは仙嚢月。
話によると、会長もあまり詳しくは知らないが、9歳の時に仙嚢月以外の家族全員が亡くなる大事故にあった。
その事件後、IQが160を超えたらしい。実際日本宵月本部の最高責任者だし、頭が強いのは間違いない。
月の中でも肉弾戦が強く、また月の中で1番強いと言われているのが牌塚月。
あの人の異能力は…実は会長も知らないらしい。
あまり異能力を使わない人で、基本的に穢れを祓う際は肉弾戦なんだとか。
だからきっと異能力は、
偵察とかあんまり実戦に使えないものor強すぎるものと言われてるらしい。
そうこうしているうちにも、リレーの列はどんどん進んで行く。
今は5人程前にいた立夏くんが華暦月にバトンを渡したところだった。
華暦月が、また空いてしまった白組との差を縮めていく。
…運動神経は無いとはいえ、月だからあるにはあるのよね…
…なんて軽く受け流したけれど、内心めっちゃバクバクしている。
これで赤組が優勝取れなければ、ほんとに神を恨むわ。
まぁでも会長なら白組をもっと引き剥がしてくれるはず…!
会長が目の前でバトンを落とす。
紅組全員が目を見開く前で、白組はバトンパスが上手く行き、颯爽と走り去っていく。
会長が混乱し、そのままバトンを持たぬまま走り出す。
大声で会長を呼び止め、戻ってきてバトンを掴んで走り出す会長を眺める。
こんな時に何してんですか、あのナルシスト会長。
白組はもう2個目のカーブに差し掛かっており、隣で白組の次の人が準備をし始める。
次の赤組の人は…私だ。
横をバトンを受け取った白組が駆け抜けていく。
早く、早く………!!!
バトンの感触が掌に伝わる。
私の大声が響き渡るリレーコースを走り出した。