大きく肩で息をする。
大声を上げながら私はコースを走り…
大声に驚いた白組が固まる隣で抜かしたのに、肝心の次の人にバトンを渡す目の前でずっこけた。
死にたいです……………………わァ…………ァ…………
会長も私も2連続の戦犯となり、結果赤組は負けてしまった。
それよりも転んでしまったことが恥ずかしい…
会長、ドヤ顔でそういうの辞めてください。
貴方はそういうことした後に、戦犯やらかしたり、色々ミスるタイプの人間でしょう?
障害物競走の障害物は全部で4つ。
1つ目はネット。
大きなネットの下をゴキブリとかなんかの虫()みたいに這いずり抜ける。
2つ目は麻袋。
下半身がすっぽり収まるくらいの麻袋の中に足を入れて、ジャンプをしながら進む。
運が良ければ、転んで、芋虫みたいにのたうち回る人の姿も見れる。
3つ目はハードル。
これは普通にハードルをジャンプで超えていくだけ。
瞬呉月、障害物競走に参加するらしいですけどハードル壊さないかが唯一の心配点です。
最後の4つ目は竹馬。
竹馬なんて、青松院学園中等部の体育倉庫に1本も無いから、小等部から借りてきたのを練習に使っていた。
竹馬には先生公認のズル方法があり、それは
「竹馬にのり、前方本面へと倒れる」
というもの。
倒れたところからまた竹馬に乗り直して進む…という方法らしい。
基本的に皆この方法を使うけれど、偶に上手くもないのに馬鹿正直に戻ったり、竹馬が馬鹿上手い人もいる。
そこで見たもの。
私は強く後悔しました。
そう、障害物競走。
好きな人の変なポーズを見ることになります。
人によっては、叫んでるのも含まれます。例えば好きな人が会長とか会長とか会長とか。
ゴキブリみたいな何かの虫みたいに動き回る好きな人を見て、好きでは無くなる可能性があるので気を付けた方が良いです。
長らく借り物競争で告白者が出なかったのはこのせいです。
『この難関を乗り越えなければ、付き合えねぇ』というのでしょうか。
流石バスケ部。
ムカつきますけど、運動神経は良いですし。
これが上手く行けば、会長は1位でゴール…!
会長は、馬鹿正直に戻る人の類でした。
そういやこの人の性格ナルシストが強くて忘れてたけど、結構真っ直ぐな性格の人だったの思い出したわ。
それも含めて、私、会長の事好きになったのよ、思い出したわ。
元々、会長を好きになったきっかけは顔。
私、すごい面食いだったから。
入学式で、1年先輩の貴方に落としたハンカチを拾ってもらって、その顔を見て恋に落ちた。
貴方は生徒会だと知った。
生徒会は頭の良い人しか入れないから、塾に入ってまで猛勉強して、生徒会へ上り詰めた。
そこで初めて関わった貴方。
思ったより数倍ナルシストで、ぶっちゃけウザかった。
だけどそれを越すほど顔が良くて…………()
それに、普通に性格も好きだった。
ナルシストな癖に、相手の事を思いやったり出来るし、いつも堂々としていて、
教室の隅のような存在の私には明るい太陽だったな。
だから、貴方、会長の事を好きになったんだっけ。
私の手には2本のペットボトル。
中身はスポーツドリンク。
「折角なら行ってきなよ!」と私の恋愛事情を知っている友達に、押されに押され、会長に渡そうと思ってやって来た。
けれど中等部3年生の観覧ゾーンには見当たらない。
あの人、声馬鹿でかいから目立つはずなんだけど()
チラチラこちらを見てくる3年生の視線に耐えられなくなって、私は校舎の方へと走り出した。
私生粋の陰キャだからなぁ…
顔良し、性格良し、文武両道の会長と、陰キャメガネの私。
これじゃあの噂の効力があったとしても振られそう…
影の校舎横をとぼとぼ歩いていると、穢れと共に人影が見えた。
あれは………